【EURO】04年ポルトガル対イングランド、混在するファンが美しかった (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 だが、ポルトガルはその前に不覚を取ることになる。開幕戦でギリシャに敗れることになった。一方のスペインもギリシャと引き分けてしまう。スペイン対ポルトガルは、敗れた方がグループリーグ落ちという設定の中で行なわれた。

 それでもスペインは余裕をかましていた。開催国の座をポルトガルに奪われても、サッカーそのものでは勝てるだろうと大国風を吹かしていた。一方、ポルトガルは必死だった。開催国の重圧とスペインへのライバル心で、絶対に負けられない状況に追い込まれていた。

 歴史ではそこでイングランドが手を差し伸べてくれた。一緒になってスペインに向かっていってくれたが、サッカーの世界ではそうはいかない。それどころかユーロ2004では、イングランドとポルトガルは敵として直接対戦することになったのだ。

 つまり、ポルトガルはスペインに勝利を収めた(1-0)が、その次の試合、準々決勝でイングランドと対戦することになったのだ。

 ポルトガル対イングランド。この対戦で想起するのは、大会が始まる2週間前、チャンピオンズリーグ優勝を決めたFCポルトが、その決勝トーナメント1回戦でマンUを下した一戦になる。

 ポルトはそこでマンUにまさかの勝利を収めた。僕はそのホーム&アウェー戦の間にポルトを訪ね、監督のモウリーニョに話を聞いていたので、ことさら深い思い出がある。その時からモウリーニョはイングランドをリスペクトしていた。近い将来、「ぜひイングランドで監督をしたい」と、抱負を語っていた。通訳曰く、イングランドでひと旗揚げることが、ポルトガル人にとっては憧れなのだとか。

 2004年6月24日、舞台はリスボンの「ルス」。

 天敵スペインを下した後のイングランド戦。スタンドを埋めたポルトガル人は明らかに高揚していた。小国の殻を破り、強国に変身した喜びをみなぎらせていた。

 ところが、立ち上がりから試合はポルトガルの思惑とは異なる方向に進んでいく。開始3分、守備的MFコスティーニャのミスをマイケル・オーウェンに突かれ、先制点を奪われてしまう。

 これまでのポルトガルなら、強国に先制ゴールを奪われると、途端にシュンとしたものだった。弱者ぶりを露呈させたものだが、この時のポルトガルは違った。

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