【EURO】負傷者続出、かつてない逆風にさらされるイングランド代表

  • 栗原正夫●文text by Kurihara Masao
  • photo by Getty Images

6月2日のベルギー戦でキレのいい動きを見せたアレックス・チェンバレン6月2日のベルギー戦でキレのいい動きを見せたアレックス・チェンバレン 正直に言って、ユーロに臨むイングランドへの期待値は相当に低い。

 南アW杯での惨敗後、スリーライオンズ(イングランド代表の愛称)は欧州予選を5勝3分けのグループ首位で突破した。しかし、前監督のファビオ・カペッロがジョン・テリーの人種差別発言を発端に辞任したのは今年2月のこと。その後、後任にはトッテナムのハリー・レドナップが有力と見られていたが、5月上旬、一転して新監督に就任したのはウェスト・ブロムウィッチ(WBA)のロイ・ホジソンだった。

 新指揮官に与えられた時間は実質1ヵ月にも満たず、準備不足を指摘する声はあとを絶たない。

 過去3年でトッテナムを2度のプレミア4位に導いたレドナップに対し、ホジソンは36年のキャリアでスイス、UAE、フィンランドの代表監督のほか、インテル、コペンハーゲン、フラム、リバプール、WBAなどを率いてきた、イングランド人では珍しい国際派として知られる。どちらが指揮官として優れているかは別にして、大会直前に迫った緊急時での登板を考えれば、温厚で保守的、組織を重んじるホジソンより、社交的で人身掌握に優れるモチベーターのレドナップが適任でなかったか、という意見は多い。

 カペッロ退任時には、ルーニーがツィッターで「次はイングランド人だろうし、レドナップならいいね」とつぶやくなど、選手、メディア、ファンから圧倒的な指示を受けていたのはレドナップだった。それだけに、大方の予想を裏切る形となったホジソンの就任は波紋を呼び、2大会ぶりのユーロを前に、イングランドはのっけから逆風にさらされているというわけだ。

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