【CL】 5年連続準決勝進出。バルセロナとグアルディオラが貫く「クライフの哲学」 (2ページ目)

  • 山本美智子●取材・文 text by Yamamoto Michko
  • photo by Getty Images


 アビダルは2013年までクラブとの契約を残しているが、移植手術後に選手として復帰するのは難しいというのが一般的な見方だ。少なくともバルサのような要求レベルの高いクラブで戦っていくのは、ほぼ不可能だろう。移植は再発の恐れがないかも含め、術後も2年ほどは治療の必要があるのだ。

 もちろん、アビダルが毎試合出場できなかったときのために、グアルディオラはフォンタスやモンタナといったバルサBからの選手をトップに上げて、左サイドバックでも試しているが、これらはあくまでも応急処置でしかない。

 右サイドバックに至っては、ダニエウ・アウベスにひたすら頼っている。アドリアーノも使ってはいるが、アウベスと比べると物足りなさは否めない。

 また、センターバックもプジョルとピケしかいない。そのプジョルはセンターバックだけでなく、状況によってはサイドバックに回らなければならない。その場合、本職はMFであるマスチェラーノ、ブスケッツらがセンターバックとしての役割を果たすことになるが、そうなると、今度は中盤の構成を考え直さなければならず、選手を組み合わせるパズルの難度はさらに上がる。

 つまり、現在のバルサはその強さからはイメージできないほど、非常にバランスの悪いチームなのだ。そのバランスの悪さを知ったうえで、相手のプレイスタイルを徹底的に研究し、自らの持ち駒で自らの欠点を補う知恵と頭脳プレイで乗り切っているのが実情だ。


 たとえば、今回のミラン戦に関して言えば、最初は3バック(3-4-3)で試合に入り、カウンターをくらうリスクを背負いながら中盤でボールを奪い、敵陣に侵入していけばいいという考えでスタートした。

 ところが、グアルディオラは途中で「思ったようにコントロールができていないし、ポジショニングも良くない」ことに気づき、4バック(4-3-3)に変えた。だが、その4バックにしても、アウベスをひとつ上の中盤の右にあげ、アドリアーノを右サイドバックにするという、一歩間違えると攻守のバランスが崩れかねないものだった。

「このふたりでしか、3バックと4バックにスムーズに切り替えることができない」からという理由だったが、マスチェラーノが「監督の戦術が勇敢だった」と評したのは、グアルディオラのこういった判断にあった。

 グアルディオラは、たった1回の試合ですべてが決まるチャンピオンズリーグの怖さを知っている。だが同時に、彼には、そういった試合で今までやったことのなかったことを試す勇気がある。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る