【Jリーグ連載】東京ヴェルディ・アカデミーの育成の本質 「僕らは"普通に"サッカーをやらせてもらっていた」 (2ページ目)
はたして、冨樫たちの世代に対しては「タクティカルな部分(の指導)も多くなった」という。
ただし、「タクティカル」が多くなったと言っても、今想像するようなホワイトボード上に選手の名前を書き入れ、相手の動きを想定して、そこでの対応が具体的に指示される、といったやり方ではない。
そこは、あくまでも読売流とでも言うべきか、試合ごとの指示は、ざっくりとしたイメージが伝えられるだけで、かなり抽象的なものだったと、冨樫は述懐する。
「たとえば、僕らDFラインの選手には、『コンパクトにやれ。だいたい横40m、縦30mぐらいで』って言われるだけ。僕らはまだ中学2年生くらいだったので、そのイメージがよくわからないながらも、選手同士でああだこうだと話して、いろいろとやってみる。
するとある日、一緒にDFをやっていた中村忠(現東京ヴェルディ・アカデミーヘッドオブコーチング)が、『ペナルティエリアの幅って、何mか知ってる? 40mなんだよ!』と。それで、『あ、横40mってペナの幅(を保つ)ってことか!』という感じで基準を覚えていくんです」
冨樫は、「それが自分の指導者としてのベースを作った」とまで言い、こう語る。
「大人になってから当時を思い出すと、『そりゃ、中2には難しいよな』とは思います。だけど、それに気づく選手と気づかない選手がいるんです。たとえば、前のほうの(ポジションの)選手は技術的なことをメインに考えていて、タクティカルな部分については言われていることに気づかなかったり、言われたことすら覚えていなかったり。
でも、僕や中村は気づいていた。だから、小見さんからのちに(クラブとしての意図について)話を聞いた時、そういうことだったのかと理解できました」
読売クラブ、あるいは東京ヴェルディのアカデミーというと、個人の技術に特化した指導が行なわれ、チーム戦術的なことは二の次。そんなイメージがある。
それはそれで必ずしも間違いではないのだろうが、おそらく選手育成の本質はそこではない。
選手を枠にはめ込み、選択肢を与えず、個人の判断を奪ってしまえば、本当の意味での技術も戦術も身につかない、ということだ。
冨樫は言う。
「育成年代になればなるほど、これはできないからこうしていこうとか、いろんなものを削いだり、縛ったりしますけど、そうなると、やっぱり本来のサッカーからは離れていく。
でも、僕らは読売で、ずっと大人のサッカーっていうか、"普通に"サッカーをやらせてもらっていたんだなって思います」
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