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高校サッカー選手権決勝後の意外な光景 夏冬制覇を遂げた神村学園は6万人の前でも「普段どおり」だった (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Masaki Asada

 優勝候補が普段どおりに力を発揮してしまえば、3-0という大差の決着も、それほど意外なものではなかったのだろう。

 そんな神村学園の"普段どおり"は、試合後も変わることがなかった。

 試合終了を告げるホイッスルが鳴り響いた瞬間、ピッチ上の選手たちは、もちろん喜びを表わしはしたが、その様はかなり控えめ。歓喜の瞬間としては、見ている側が少々拍子抜けしてしまうほどだった。

 なかでも印象的だったのは、キャプテンのDF中野陽斗である。

 中野は喜びもほどほどに、鹿島学園のキャプテン、齊藤空人と互いに笑顔で歩み寄り、何事か言葉をかわすと、ハグをして健闘を称え合った。その後、チームメイトに「並ぼう、並ぼう」と声をかけ、整列をうながす姿はテレビ中継でも映し出されていた。

「率直に優勝はうれしいけど、自分たちの力だけではない」

 中野は試合後、そう語り、これまで神村学園の歴史を積み上げてきた先輩たちへの感謝の言葉をつないでいる。

 一方、チームメイトたちの様子を「みんな、いい意味で『やってしまったな』みたいな感じだった」と振り返ったのは、好セーブで初優勝をたぐり寄せたGKの寺田健太郎である。

 寺田自身にしても、事の重大さを感じたのは、試合終了からしばらくしてのことだったという。

「6万人の国立というテレビで見ていた舞台で優勝っていうのが、あんまり実感がなくて......。実感は、(試合後に)ひとりでトイレに行っているときが一番湧きました(笑)」

 J1のアビスパ福岡入りが内定しているMF福島和毅もまた、無邪気に感情を爆発させることはなかった。

 2年前の選手権では、1年生ながら背番号10を託されたにもかかわらず、準々決勝敗退に終わっていた福島には、今大会にかける並々ならぬ思いがあったはずである。事実、福島は「めちゃくちゃうれしかった」と、選手権初制覇に笑顔を見せる。

 ところが、福島は、選手権決勝どころか、あたかも日常の練習試合の一幕でも語るかのように、淡々とこうも振り返るのである。

「笛が鳴った瞬間はとてもうれしかったけど、まだあいさつもあったし、相手チームに倒れている人とかもいたので。まずはそっちが優先かな、みたいな感じでした」

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