サンフレッチェ広島「ロングスローでルヴァンカップ優勝」の是非 ルールの盲点と理想なき究極の合理主義
連載第65回
杉山茂樹の「看過できない」
サンフレッチェ広島が柏レイソルを3-1で下し、2度目の優勝を飾ったルヴァンカップ決勝。メディアの多くが報じたのは「広島の総合力と安定感」だった。しかし、この試合で筆者の目に留まったのは、広島のすべてのゴールを生み出したセットプレーである。とりわけ2ゴールに大きく関与した中野就斗のロングスローだった。まさに試合を分けるビッグプレーと言えた。
勝因は中野のロングスロー。そう言っても過言ではない。
ルヴァンカップ決勝でロングスローを投げ入れる中野就斗(サンフレッチェ広島)photo by スポーツ報知/アフロ 試合後、広島のミヒャエル・スキッベ監督は「セットプレーは世界のトレンドになっている。そこに我々もこだわってきた結果だ」と述べている。つまり、2点目のゴールとなった東俊希のFKと、1点目、3点目を生み出した中野のロングスローを一緒くたにし、「セットプレー」という言葉で括ったのである。
ロングスローが世界でじわりと流行する兆しがあるのは確かである。しかしFKには流行り廃りはない。CKしかり。ロングスローとは性質の異なるセットプレーだと言っていい。
トレンドとは、その割合が増えているか否か、だろう。トレンドという言葉に適うのはFK、CKではなく、ロングスローである。なぜスキッベは「ロングスローはトレンド」とハッキリ言わなかったのか。言葉の巡り合わせというより、どこか後ろめたさの残る、触れられたくないプレーだからではないか。
中野が投じたロングスローは、2本とも狙ったところにピンポイントで着弾した。1本目はゴール前で構える荒木隼人の頭に。2本目はニアポストに走り込んだ佐々木翔の頭を的確に捉えている。単純に、すごいと感心する。大雑把な投げ方ではない。その強肩ぶりには恐れ入る。
著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

