ガンバ・倉田秋を突き動かす原動力「『キャリアが終わるんじゃないか』――その怖さが今も自分のなかにある」 (4ページ目)
というのも、代表活動ってたった1~2週間ですからね。さっき『自分をグッと引き上げられるような感覚になった』とは言いましたけど、そんなすぐにサッカーがうまくなるはずがない(笑)。でも、あの場で刺激を受け、自分に『もっと、もっと』と要求できるようになったから成長も見出せてきたし、キャリアも続いてきたのかな、と。実際、今だってこの歳で技術面での成長を見出せるとは思っていないですけど、その揺らがないメンタルがあることが、結果的に自分を走らせ、戦わせてくれている。
あとは、2022年で味わった危機感かな。キャリアの後半に差しかかって味わった悔しさがもう一段階、ギアを上げるきっかけになった」
2022年といえば、彼が初めて"キャプテン"に就任したシーズンだ。新たな指揮官に就任した片野坂知宏監督のもと、開幕戦から先発のピッチに立った倉田だったが、4月にハムストリングの肉離れで離脱。約2カ月後に戦列に戻ったものの、その後も軽度の肉離れを繰り返してしまう。チームも思うように白星をつかめず、後半戦は特に監督交代、残留争いの苦境に立たされるなかで最終節に残留を確定させたが、倉田はその終盤戦、ほとんど先発のピッチに立つことができず、ラスト4試合に至っては、メンバー入りも叶わずにシーズンを終えた。
「僕にとってサッカー選手としての一番の楽しみは、公式戦でバッチバチの本気の勝負をすること。それができない悔しさはもちろんあったし、キャプテンとして、苦しんでいるチームを助けられないもどかしさ、ピッチで力になれない自分への腹立たしさは途轍もなくデカかった。その自分とどう向き合えばいいのか、正直、感情のコントロールがうまくいかない時期もありました。
練習が始まれば当然、ガムシャラにやるものの、クラブハウスを出た途端、いろんな感情に襲われて、落ち込んだこともあります。自分をどうにかして納得させたくて、小説から啓発本まで、読書をするようになったのもこの時です。無理矢理にでも自分を納得させられる考え方がほしくて、言葉を探していました。
でも結局、あれこれ考えても最後は『自分を出しきって戦い続けるしかない』『プレーで証明するしかない』ってことに行きつくんですよね。それに、チームが苦境に立たされている状況を考えれば、キャプテンの僕が暗い顔をしているなんて、ありえへんから。だからこそ日々の練習から『俺ら、こんなもんじゃないぞ』『まだまだいけるぞ』って姿を先頭に立って見せ続けることだけに気持ちを注いでいたし、それが自分のためになるとも思っていました」
当時、試合に出ていたメンバーがリーグ終盤、口々に「(倉田)秋くんのキャプテンシーに触れて、奮い立たない選手はいない」(宇佐美貴史)と話していたのを思い出す。その戦いの日々は、"残留"をあと押しする力になり、倉田自身を再燃させるきっかけにもなった。
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