ガンバ・倉田秋を突き動かす原動力「『キャリアが終わるんじゃないか』――その怖さが今も自分のなかにある」 (5ページ目)
「2022年は肉離れを繰り返してしまったこともあって、試合に絡めない時期にもう一度、体としっかり向き合えたのも大きかったです。単にガシガシと体を鍛える筋トレではなく、正しく鍛えることを覚えたというか。いろんな本や資料を読み漁って体の構造から学び直し、どこの筋肉を動かせばどう効いてくるのかを正確に理解したうえで、筋トレにも向き合えるようになった。......って言うと聞こえはいいけど、正直、あの時は意識をそっちに向けることで、自分を保っていた気もします。
でも結果的に、それが今のコンディションや体の安定につながっていると考えても、やっぱり置かれている状況にしっかり向き合って、懸命に足掻いて、取り組むことに無駄はないな、と。それに、あのシーズン、繰り返し、頭をよぎった『キャリアが終わるんじゃないか』っていう"怖さ"は、今も自分のなかにあって、それが自分を突き動かす原動力にもなっている。
ただ、だからといって、不安になることはないです。だって、やるしかないから。この世界は、日々の積み重ねの先にしか"結果"はないからこそ、とにかく後悔しないように毎日を100%でやりきる。やれることを全部、やる。気持ちはいつもそこに向いています」
一点の曇りもない表情で言いきるあたり、倉田が今も持ち続けているという"怖さ"は、彼にとって一種の"お守り"のようなものなのかもしれない。今日より明日、明日より明後日、少しの慢心もなく戦い抜き、新たな自分を見出すための、だ。
「誰だって、キャリアの終わりはくるから。そこに思考を持っていかれても何も状況は変わらんから。それなら、必死に体を動かして、毎日を悔いなく精一杯過ごすことに気持ちを向けたほうがよほどいい。それに、面白いもので、体って磨けば磨くほど、きちんと応えてくれるから。もしかして、自分には永遠に終わりがこないんじゃないか、とすら思っています(笑)。
ただし、プロは自分が『まだまだやれる』と思っていても、それを他者に評価されないと生き残れない世界やから。僕を求めてくれるクラブや監督がいなければ、戦う場所がなくなるのは百も承知なので。やり続けることと並行して常に"求められる選手"で居続けなアカン。裏を返せばここから先は、"求められる選手"でなくなった時が、キャリアが終わる時なんやろうな、と思っています。じゃないと、自分では絶対にやめられへんし、そもそも『やりきった』と思える瞬間なんて、永遠にこないと思うから(笑)」
今のところ、その日が近づいている気配はない。磨き抜かれた肉体で攻守に走り回り、泥臭く、しぶとくゴールに迫り続けている姿が、それを教えてくれている。
(おわり)
倉田秋(くらた・しゅう)
1988年11月26日生まれ。大阪府出身。2007年、ガンバ大阪ユースからトップチームに昇格。2010年にJ2のジェフユナイテッド千葉に期限付き移籍し、翌年はセレッソ大阪に期限付き移籍。もともと実力の高さには定評があったが、それぞれのクラブで経験を重ねて自信をつける。2012年に古巣のガンバに復帰。以降、ガンバひと筋で、チームの主力として奮闘を重ねている。
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