検索

ガンバ・倉田秋を突き動かす原動力「『キャリアが終わるんじゃないか』――その怖さが今も自分のなかにある」 (3ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa

 今だから明かせますけど、2015年に代表で受けた刺激が忘れられず、どうしてもまた代表に呼ばれたくて、足の指が折れたり、足首の靭帯を痛めたりといったアクシデントもありながら、痛み止めを打ちまくってピッチに立ち続け、必死にアピールして引き寄せた"代表"でしたが、それだけの価値がある場所でした」

 なかでも、10代の頃から世代別の日本代表で一緒にプレーすることも多かった同世代、香川真司(現セレッソ大阪)のプレーは衝撃であり、大きな刺激だったという。

「当時の真司は、ドルトムントにいた頃でしたけど、代表チームでも群を抜いていました。中学生の頃から間近で見ていた選手だっただけに、よりその成長の度合いというか、彼が"海外"で培ったものの大きさを知ったし、自分との明らかな差も感じました。でも、その現実を知られてよかったと思っています。とにかく自分はガンバでもっともっと、うまくなるしかない、戦える選手になろうと覚悟を持てたから」

 加えて、2017年からガンバで背番号「10」を背負うようになったことも、倉田にとってはキャリアの節目ともいうべき出来事だ。どことなく自分に感じていた"物足りなさ"を振り払うためにあえて自分にプレッシャーをかけた。

「ガンバの『10番』といえば、フタさん(二川孝広)が14シーズンにわたって背負って、代名詞にしてきた番号。チームのタイトルに貢献してきた姿も見てきただけに、それを受け継ぐ"重み"は百も承知やったけど、『10番』を背負ってタイトルに貢献する自分を求めないと、今以上の姿は求められない気がしたというか。過去を振り返っても"追い込まれてこそ成長できるタイプ"だと自覚していただけにもう一度、そうした状況を自分に作り出したかった」

 そんな覚悟のもとでの、ガンバの「10番」としての戦いも今年で9年目に突入した。プロキャリアとしては、19年目。昨年の7月20日の湘南ベルマーレ戦で達成したJリーグ史上32人目のJ1通算400試合出場という偉業も「単なる通過点」だと受け止め、今もガンバの最前線で戦い続けている。

 今季ここまでのJ1リーグには23試合に出場し4得点(第28節時点)。一般的に30代も後半に差しかかれば、さまざまなブレーキを感じる選手も多いと聞くが、倉田に関してはむしろ、年々逞しさを増している印象だ。ここ数年、試行錯誤を繰り返しながら続けてきた筋トレや、数多の"体"に対する働きかけによって磨き抜かれた肉体も「今が一番いい状態」だと本人。しかも「まだまだ伸びしろはある」と笑う。いったい、何が彼を走らせているのか。

「『10番を背負ってタイトルに貢献する自分』はまだ見出せていないし、まだまだ足りていないと思っていますけど、やっぱり、日本代表に身を置いたことによるメンタルの変化は大きかったかも。あれを機に『考え方次第で変えられることはたくさんある』と心から思えるようになったから。

3 / 5

キーワード

このページのトップに戻る