39歳・家長昭博の思考「勝負の世界に生きている自覚はありながらも、勝った、負けたに感情が動かされることはあまりない」 (3ページ目)
その考えがあるからだろう。今年で在籍9年目を数える川崎では、Jリーグ連覇を皮切りに、2020年、2021年には再びリーグ連覇を実現したり、天皇杯やルヴァンカップで繰り返し頂点に輝くなど、チームのど真ん中で数々のタイトルを手にしてきたが、それらを獲得した事実を、家長はさほど強烈な記憶として残していない。
それは逆も然りで、たとえば今シーズンも、AFCチャンピオンリーグ・エリート2024/2025で決勝まで上り詰めながらアル・アハリに0-2で敗れ、川崎も、家長も、唯一手中にしていないアジアタイトルを逃したが、その瞬間に感じた悔しさはすでに過去のものとなり、そこでつかんだ"体験"だけが財産として、彼のなかで息づいている。
「いろんな風向きもよくて、いい勝ち方が続いて決勝まではいきましたけど、アル・アハリは個の質を含めて、ちゃんと強かったです。準決勝までの相手とはまったく違う強さを備えていた。なので、勝ちたかったですけど、甘くはないよな、そうだよな、っていうのが、正直な気持ちです。
初めての決勝で、それをちゃんと感じられたのもよかったし、肌感としては10回対戦したら3回......は難しいけど、2回くらい勝てるかもな、って現実を知り、自分を知れたのもよかった。それに、この歳になれば......もはや、獲れていないタイトルがあるくらいのほうがいいとすら思っています。
こんなことを言ったら怒られるかもしれないけど、プレーがうまくいかないとか、思うようにいかないことがあるほど、喜ばしい。最近は以前ほど体が動かないことも自覚していますけど、なんなら、それも喜ばしいです(笑)」
"未知の世界"が、彼にとっては新たな"伸びしろ"を見出す体験になっていくからだ。そしてそのマインドこそが39歳になった今も、家長がキャリアを続けられている理由かもしれない。
「もはや伸びしろがあるのかも疑わしいですけど、少なからず今も、自分がサッカーをしている意味みたいなものを探しているのは間違いないです。それを残りのキャリアで見つけられるのか、あるいは、選手ではなくなった時に答えが出るのか......っていうとなんか、めちゃ格好よく聞こえる気がするけど、実際にやっていることは18〜19歳頃も、39歳になった今も、ほとんど変わっていない。(自分が)驚くほど歳をとって、体が理想どおりに動かなくなってきて、(現役を)やめる寸前にあるってことは大きな変化かもしれないですけど。
フロンターレだって9年も在籍しているので、僕のなかでは当然、特別なクラブのひとつになっていますけど、正直、加入した時と同じように、いまだに馴染んでいる感もない(笑)。それはフロンターレというクラブにとっても同じで、いまだに僕に異物感を感じているんちゃうかな。若い選手なんて特に『この人、何を考えているんやろ。敵か味方か、どっちやねん』くらいで見ていると思いますよ」
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