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ジーコ、カズ、ゴンを抜いて...FC町田ゼルビアの中島裕希がJ1最年長得点記録を刻む日は来るか (3ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa

 そうやって懸命に過ごしていたから、サイバーエージェントが運営会社になってくれて、こんな立派なクラブハウスと練習場ができて、トレーニングのあとには食事も出るような環境でサッカーができるという今を経験できていますしね。そんなふうに『未来はわからない』ということもまた、今を頑張る励みになっています」

「いいこと」で言えば、2023年のJ2リーグを制して、町田に加入した時から目指し続けたJ1昇格を実現したことも、ひとつだろう。

「もう、めちゃくちゃうれしかったです。人や環境が変わるなかでも、自分自身の『町田のために』という想いには少しも揺らぎがなかったし、常々そこだけは誰にも負けていないと思って戦ってきたので。サポーターも含めて、このクラブに関わる人たちすべての想いがJ1昇格につながった瞬間は、仙台や山形で経験したJ1昇格ともまた違った、格別の喜びでした。

 トライアウトを受けるところまで落ちた自分を拾ってもらって、このチームに求め続けていただいたことに対する恩返しは、それしかないと思ってサッカーをしてきたからこそ、時間はかかったけど、それが実現できて本当に......今思い出しても幸せな気持ちになるくらい、うれしかったです」

 つけ加えるなら、昨シーズンの第33節・川崎フロンターレ戦で、中島にとっては2015年の山形時代以来となるJ1リーグでの9年ぶりのゴールを決められたことも、だ。

 思えば、クラブ史上初めてJ1リーグを戦った昨シーズン。町田はタイトル争いに顔を出す快進撃を見せた。だが、7月末頃から勝点を落とす試合が増え、第29節の浦和レッズ戦での引き分けにより、長らく守り続けてきた首位の座を明け渡す。そうした状況下、中島が初めて先発を預かったのが、第30節のアビスパ福岡戦だ。この試合で3試合ぶりの白星をつかんだ町田はすぐさま首位の座を奪い返し、粘りを見せる。

 そうして一進一退の首位攻防戦を繰り広げるなか、中島がシーズン初ゴールを挙げたのが、リーグ戦では3試合目の先発出場になった川崎戦だ。

 結果的にその試合は逆転負けを喫し、シーズンを通しても終盤戦に勝ちあぐねてタイトルには届かなかったが、町田の最古参が終盤戦で示した"想い"も、川崎戦での一撃も、確かにチームの熱に変わった。チームキャプテンの昌子源が「(中島)裕希くんはいつも、その背中で僕たちに何をすべきかを示してくれた」と話したように。

「メンバー外が続いても、若い選手とキツい練習を積み上げながら手を抜かずに、ブレずに続けてきたなかでチャンスをもらって、あの得点を決められた。町田のためにという一心で戦ってきて、あの時初めて頑張ってきたことが報われたというか、『ああ、俺はこのために頑張ってきたんだな』と思えたんです。

 ゴールの瞬間、サポーターも、チームメイトも、みんながめちゃめちゃ喜んでくれたのもうれしかった。勝っていたら、次の試合もスタメンだったんじゃないかって思うので、そこが僕の足りていないところなんですけど(苦笑)」

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