検索

ヴィッセル神戸の現状が思いのほかヤバい 3連覇を狙う王者がぶち当たっている壁 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 とはいえ、ここまでの苦戦が決して過密日程によるものばかりでなく、2連覇中のJ1王者が壁にぶつかっていることも確かな事実なのだろう。

 2連覇に至った神戸の強みが、大迫勇也や武藤嘉紀を中心とした、個人能力の高さにあったことは言うまでもない。繊細な戦術など必要とせず、前線にボールを放り込みさえすれば、技術的にもフィジカル的にも優れた個が、いとも易々とチャンスを作ってしまう。

 そんな問答無用の力技は、他のクラブが簡単には真似のできないものだった。

 しかし、今季の神戸はその前提、すなわち"個人能力で圧倒する"という部分が崩れてしまい、なかなかゴールが奪えない。

 前述の新潟戦にしても、90分を通してボール保持率で上回り、敵陣で試合を進める時間は長かった。だが、結局はノーゴール。よく言えば、神戸はバランスがいいサッカーをしていたが、裏を返せば、どこからもリスクを負って前に出ていこうという動きが見られなかった結果である。

「シンプルにクロスを上げることには、相手も対策をしてきている。もう少し深く攻め込むことは必要かなと思う」とは、ボランチを務める扇原貴宏の弁だ。

 局面ごとに数的優位を作ることができれば、チャンスが生まれる可能性が高まるが、その一方で、逆にそこでボールを失えば、ピッチ上の別のどこかでは数的不利が生まれる危険性も高まる。攻撃の厚みを作る作業は、失点のリスクと表裏一体だ。

 それゆえ、数的優位など作らずとも個の力で局面を打開できてしまう神戸の攻撃力は脅威だったわけだが、それに頼ってきたことの弊害が見え始めているのかもしれない。

 キャプテンの山川哲史も、「これまでのシーズンは個人のところでも勝てているシーンが多かった。細部のこだわりというところは、もう少し一人ひとりが意識してやらないといけない」と語り、こう続ける。

「アーリークロスはチームの狙いでもあるが、ただその数が増えてもはね返されるシーンが多かった。もう一個工夫が、さらにもう一個内側をとる人がいたりとかが必要かなと思う」

 この苦境に際し、シーズン開幕後にFWエリキ(FC町田ゼルビア→)を緊急補強するなど、神戸も決して手をこまねいて見ているわけではない。だが、試合内容を見る限り、決定的な解決には至っていないのが現状だ。

 まだシーズン序盤。とはいえ、これ以上の後れは取り返しのつかないことになりかねない。

フォトギャラリーを見る

2 / 2

キーワード

このページのトップに戻る