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ヴィッセル神戸・山川哲史が酒井高徳を見て学んだリーダーシップ「言葉に愛情を感じる」 (2ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa

 でもそういうところで、ひとりで剥がせたり、パスで相手をひとり置いていければ、局面はかなり変わっていくはずなので。"2連覇"によってチームとしても相当マークされるし、対策を講じられるはずですけど、今年はよりチャレンジの選択をすることで、チームの士気を高めていきたい。その成功体験を繰り返すことで、自信をより揺るぎないものにしていきたいと思います」

 また、自分の"弱さ"を自覚していることも、力にしたいと言葉を続けた。

「昨年の最終節もしかり、僕は決してメンタルが強いわけではなく......いつも自信満々でもないし、どちらかというと、いいことより悪いことを想像してしまうことが多いんです(苦笑)。でも、その弱さを自覚しているから、強くいようともするし、準備もするし、最善の状態でピッチに立とうともする。それが、昨年も大きなケガなくシーズンを通して試合に出続けられたことにも繋がったと思うので。

 だからこそ、これからもこの自分を受け入れ、うまくつき合っていこうと思っているし、緊張やプレッシャーを反骨心とか、『やってやる』という気持ちに変えて戦っていこうと思っています」

 クラブ創設30年目、阪神・淡路大震災からも30年を数えるシーズンに、ともに復興の歴史を歩んできたたくさんのファン、サポーターとより大きな歓喜をつかむためにも。

「僕は阪神・淡路大震災後に生まれた世代ですが、ヴィッセルが復興とともに歩んできたクラブだということは、ジュニアユース時代からずっと意識してきたし、今も自分の核に据えています。毎年1月17日が近づくと、映像を通して記憶している当時のことが蘇ります。

 また、2011年の東日本大震災をはじめとする日本で発生した震災を通して、阪神・淡路大震災のことを考えることもあります。東日本大震災からも10年以上の時間が過ぎた今も、苦しんでいる人たちがたくさんいるということを目の当たりにするたびに、神戸の復興もきっと大変な道のりを歩んできたんだなと想像することもあります。

 だからこそ、こうしてすばらしい環境でサッカーをさせてもらっていることに感謝しながら、ヴィッセルのエンブレムをつけてプレーする責任をしっかり担っていきたいし、いいニュースを届け続けられるクラブでありたいとも思う。今シーズンもできるだけ多くのタイトルを獲得することで、30年という長い歴史を支えてくれた人たちに、今も応援し、支えてくれているたくさんの人たちにいいニュースを届けたいと思います」

 百戦錬磨の選手が集うチャンピオンチームに誕生した若きリーダーは、弱い自分を知り、受け入れることで、強く、逞しく、先頭に立つ。

(おわり)

山川哲史(やまかわ・てつし)
1997年10月1日生まれ。兵庫県出身。中学、高校とヴィッセル神戸のアカデミーに在籍し、筑波大学に進学。2020年に卒業後、ヴィッセル入り。入団当初はサイドバックを任されるが、2023シーズンからは本職のセンターバックで起用される。持ち前の高さと強さを生かしてレギュラーに定着。今季からキャプテンを務める。

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