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ベガルタ仙台はJ1にいなきゃいけないクラブ ピッチで流した涙が郷家友太をさらに強くする (3ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

【1秒たりとも忘れちゃいけない】

 昨シーズン16位だったチームは、6位でフィニッシュしてプレーオフ決勝まで勝ち上がった。個人的にもポジティブな変化を感じ取れるシーズンを過ごすことができた。

 それでも、J1には届かなかった。

「16位からプレーオフ決勝までいけたのは、ホントにみんなの成長があったからだろうし、スタッフやサポーターのサポ--トがあったからこその順位だと思います。でもやっぱり最後、突破しないといけない。また来年、同じところからスタートしますけど、この悔しさは1秒たりとも忘れちゃいけない。

 この敗戦はチーム全員が成長できる理由になるというか、絶対に忘れちゃいけないゲームだと思う。僕自身は自分のサッカ--人生で一番悔しい瞬間だった。自分の地元のチームが負けたので、人一倍悔しい気持ちと、サポーターをJ1へ連れていけなかった申し訳なさがあります」

 試合終了直後から、悔しさと歯がゆさ、自分への物足りなさが全身に突き刺さった。負の感情に襲われる試合を繰り返さないために、歓喜を爆発させる岡山の選手たちから目を背けなかった。

「もしかしたら、自分たちがああやって喜んでいたかもしれない。サッカー選手としてこういう悔しさは、カップ戦の決勝とかリーグ戦の最後しかない。そういう場に立てたので、自分たちは敗者なんですけど、勝者のああいう姿を忘れないように、という思いでした」

 リーグ最終節でプレーオフ進出を決めた試合後、フラッシュインタビューで涙をこぼした。この日の試合後も、サポーターのエールを聞いて瞳を潤ませた。たくさんのものを背負いながら、シーズンの最後までピッチに立ち続けた。

「いろいろなプレッシャーもありながら戦ってきたので、ちょっと一回、頭からサッカーを離したい」というのは、率直な思いだろう。それでも、「来シーズンこそは」との決意が、たしかに立ち上がっている。

 クラブの未来を背負う子どもたちに、次こそは歓喜の瞬間を届けたい。届けなければならない──決して揺るがない思いが郷家を奮い立たせ、仙台というチームに欠かせないこの男を、さらに強くするはずだ。

著者プロフィール

  • 戸塚 啓

    戸塚 啓 (とつか・けい)

    スポーツライター。 1968年生まれ、神奈川県出身。法政大学法学部卒。サッカー専誌記者を経てフリーに。サッカーワールドカップは1998年より7大会連続取材。サッカーJ2大宮アルディージャオフィシャルライター、ラグビーリーグワン東芝ブレイブルーパス東京契約ライター。近著に『JFAの挑戦-コロナと戦う日本サッカー』(小学館)

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