国立競技場が世界一のスタジアムである理由 神宮外苑地区の樹木伐採はその価値を貶める (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【世界にも例がない理想的なスポーツパーク】

 サンティアゴ・ベルナベウ(マドリード)、カンプノウ(バルセロナ)、ヨハン・クライフ・アレーナ(アムステルダム)、ウェンブリー(ロンドン郊外)、オールド・トラッフォード(マンチェスター)、アンフィールド(リバプール)、ルジニキ(モスクワ)、ベルリン五輪スタジアム(ベルリン)、アリアンツ・アレーナ(ミュンヘン)、ダ・ルス(リスボン)、スタッド・ドゥ・フランス(パリ郊外)、ヌーヴォ・スタッド・ドゥ・ボルドー(ボルドー)、ジュゼッペ・メアッツァ(ミラノ)、オリンピコ(ローマ)、マラカナ(リオデジャネイロ)、アステカ(メキシコシティ)、ローズボウル(パサデナ)、シドニー五輪スタジアム、北京国家体育場......等々の有名スタジアムも含まれる。

 しかし、このなかに国立競技場にアクセスで勝るスタジアムはない。国立競技場はその点において、筆者の知る限り世界一のスタジアムなのだ。断トツと言っても過言ではない。

 その事実を知る前、筆者は国立競技場を少々ナメていた。陸上トラックつきの非サッカー専用スタジアムであることを最大の理由に、低評価を下していた。それを圧して余りある魅力に気づけずにいた。それはアクセスの良好さだけではない。世界のスタジアムを巡り歩くなかで、スポーツパークとしての魅力にも気づくことになった。

 国立競技場の周辺には、神宮球場、秩父宮ラグビー場、東京体育館、アイススケート場、テニスコート、軟式野球場、ランニングコース、明治公園などが点在する。少し前までは、ゴルフ練習場を併設する神宮第2球場も存在した。

 繰り返すが、場所は首都東京のど真ん中だ。世界と比較したとき、何かと前時代的に映ることが多い日本のスポーツ界だが、国立競技場界隈の環境は例外である。超先進的で理想的な世界が広がっている。これまた世界には存在しないと断言できる空間なのである。

 その魅力を演出しているのが神宮外苑の杜である。実際、国立競技場で観戦していても、神宮球場で観戦していても、秩父宮ラグビー場で観戦していても、その厳かで深々としたムードに浸ることができる。他では味わうことができない、独得の気配を無意識のうちに感じとることができる。

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