国立競技場が世界一のスタジアムである理由 神宮外苑地区の樹木伐採はその価値を貶める
連載第13回
杉山茂樹の「看過できない」
今季ここまで、国立競技場で行なわれたJ1リーグの試合は11試合を数える。平均観客数は5万人を超える。9月28日に行なわれたJ2の一戦、清水エスパルス対横浜FCでさえ5万5598人の観衆を集めている。
11月2日に行なわれたルヴァンカップ決勝(名古屋グランパス対アルビレックス新潟)も例外ではなかった。チケットは完売。雨が断続的に降り続く悪天候にもかかわらず、国立競技場には6万2517人の観客が訪れた。名古屋、新潟にゆかりのある東京在住者に加え、両地元から新幹線などで駆けつけたファンもさぞ多かったと思われる。
新しい国立競技場見たさが、その理由だとは思えない。ルヴァンカップの決勝は、前身のナビスコカップ時代から数えて30数年間の間、そのほとんどが国立競技場で行なわれてきたが、スタンドは常時ほぼ満員に埋まっていた。もうひとつのカップ戦である天皇杯の決勝もしかりである。スタンドは対戦カードにかかわらず確実に埋まる。
観衆に足を運ばせるいちばんの動機は、国立競技場の場所としての魅力だろう。首都東京のど真ん中。何と言ってもアクセスがいい。千駄ヶ谷、国立競技場、信濃町、外苑前、北参道、青山一丁目と最寄り駅は数多く、新宿、渋谷、赤坂見附という交通の要所も十分、徒歩圏内だ。新幹線が発着する東京駅にも30分以内で辿り着くことができる。
また、界隈には表参道、青山、原宿という楽しげな人気エリアも広がっている。スポーツツーリズムを語る時、国立競技場ほど条件に恵まれたスタジアムも珍しいのだ。日本はもちろん、世界を見渡しても、である。
ルヴァンカップ決勝で6万2517人の観客を集め満員となった国立競技場 photo by Fujita Masatoこの記事に関連する写真を見る 筆者にはこれまで多くのスタジアムを訪れた過去がある。W杯11回、ユーロ8回、コパ・アメリカ5回、アジアカップ8回、五輪10回と、大きな大会をフルカバーしているので、訪れたスタジアム数はそれだけでも数百を数える。チャンピオンズリーグの観戦試合数も300試合を超える。これに各国リーグの試合等々を加えると、膨大な数となる。
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著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。