稲本潤一と今野泰幸が語る、南葛SC風間八宏監督のサッカー「フロンターレ時代より難しくなっている」 (4ページ目)

  • 高村美砂●取材・構成 text by Takamura Misa

 ただ、このチームは所属選手が40名を超える大所帯なので。まったく試合に絡めない選手も出てくるだけに、その選手たちのモチベーションを下げないように声掛けをするとか、練習中に「こうしたほうがいいんちゃうか」みたいなことは、コーチってことに関係なく、意識して言うようにはしています。

今野 僕は、もっともっとイナさんに感じていることを言ってほしいですけどね。(試合に)出ていない選手に声を掛けたりする姿は見ていますけど、試合に出ている選手にも......勝つためには、イナさんの声がもっともっと必要だと思う。ここまでの話を聞いていても、やっぱりイナさんは僕ら以上に深いところで風間さんの考え方を理解しているように感じるだけに、どんどんピッチで修正してほしい。

稲本 風間さんのサッカーをしていると、こうしたほうがいいかな、ああしたほうがいいんじゃないか、みたいな意見が出てくるのはすごく、わかる。でも、風間さんが今のサッカーの先に描いているのって、フロンターレ時代は「バルセロナに勝とう」やったし、南葛だと「バイエルンに勝とう」やん?

今野 フロンターレの時はバルサだったんだ!

稲本 そう。そこがなぜ変わったのかは、風間さんに聞いてもらうとして(笑)、それを実現するには? ってことからの逆算で今のスタイルがある。

 それってすなわち、チームとしてここから攻めましょう、ここがよくないから直しましょう、ではなく、一人ひとりがレベルを上げなければ実現しないサッカーをしているということだと思うんよね。ここに立ち位置を取れば、ここが空いてきますよね、という組織論というより、この枠のなかで個人のスキルを最大限発揮しましょう、が狙いで、だから、一人ひとりがうまくなることでしか解決しない。

 実際、練習が終わったあとのトレーニングも、「自分に足りていないことをやってくれ」って要求やん? つまりは自分がうまくなるしかないし、そうやって個人のスキルが上がって、みんなが求められていることをできるようになれば、チームでやっても当然うまくいくよね、みたいな考え方。

 だから、反復練習もめちゃめちゃするし、同じこともめちゃめちゃ言う。そういう意味では修正というより、ひたすら個々が自分の成長を求めるしかない。要するに、究極の個人戦術の集合体が風間さんのサッカーだと、僕は思ってる。

(つづく)◆45歳・稲本潤一、41歳・今野泰幸が現役にこだわる理由>>

稲本潤一(いなもと・じゅんいち)
1979年9月18日生まれ。大阪府出身。1997年、ガンバ大阪の下部組織からトップチームに昇格。若くしてチームの中心選手として奮闘した。そして2001年、アーセナルへ移籍。以降、フラム、WBA、カーディフ、ガラタサライ、フランクフルト、レンヌでプレーし、2010年に帰国。川崎フロンターレに加入した。その後、北海道コンサドーレ札幌、SC相模原に在籍し、2022年に南葛SC入り。その間、日本代表でも活躍。世代別代表では、1995年U-17世界選手権(現U-17W杯)、1999年ワールドユース(現U-20W杯)、2000年シドニー五輪に出場。A代表では、2002年、2006年、2010年と3大会連続でW杯に出場した。国際Aマッチ出場82試合、5得点。

今野泰幸(こんの・やすゆき)
1983年1月25日生まれ。宮城県出身。東北高卒業後、北海道コンサドーレ札幌入り。1年目から出場機会を得て、2年目にはチームの主軸として存在感を示す。2004年にFC東京に完全移籍。ナビスコカップ(現ルヴァンカップ)、天皇杯などの栄冠獲得に力を発揮した。そして2012年、ガンバ大阪へ移籍。2014年のリーグ制覇をはじめ、数々のタイトル獲得に貢献した。その後、2019年夏、ジュビロ磐田へ移籍。2022年に南葛SCに加入した。日本代表でも常に中軸として活躍。世代別代表では2003年ワールドユース(現U-20W杯)、2004年アテネ五輪に出場。A代表でも、2010年、2014年とW杯に2度出場した。国際Aマッチ出場93試合、4得点

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