町田ゼルビアへの批判を福田正博が考察「もっと強くなってJリーグへの関心を煽ってほしい」 (2ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro

【他チームの不甲斐なさにも目を向けるべき】

 そうした経緯もあって町田批判は強まっているのだと思うが、もし批判をしている人たちが別クラブのサポーターだとしたら、その批判は自チームの不甲斐なさに向けるべきなのでは? と思うところがある。

「町田のサッカーでは世界に通じない」「ポゼッションサッカーこそが日本にはふさわしい」などの意見もあるが、町田が戦っているのはJ1であって、世界のトップリーグではない。黒田監督が率いているのは日本代表ではなく、FC町田ゼルビアなのだ。

 サッカーにはスタイルがある。私自身、日本サッカーが世界で戦うには、ポゼッションサッカーがひとつの活路だと思っている。だからといって、日本サッカーのすべてのチームがポゼッションサッカーを志向する必要はないとも考えている。

 なぜならサッカーは世界中で行なわれ、多種多様な文化・風土のなかで育まれた、さまざまな価値観を持った国の代表と対戦しなければならないからだ。自分たちと違うからと相手を非難したところで、試合に勝てるわけではない。相手に対応する柔軟性や適応力を高めるためにも、国内のJリーグには多様なスタイルのサッカーがあって然るべきなのだ。

 ましてや、勝ち点を争うリーグ戦で、勝ち点よりも重要なものがあるのだろうか? 勝利や勝ち点を手にするために生まれたのがJリーグを含む世界各国のクラブのスタイルだということを忘れてはいけないし、勝ち点を取れない言い訳のためにスタイルがあるわけではないと私は思っている。

 サッカーで勝利することにかけて、黒田監督ほど貪欲な指導者は多くはない。プロクラブを率いるのは町田で2シーズン目だが、長く指導した青森山田高時代から勝利に徹したサッカーをしてきた。理由は年に一度の高校サッカーで結果を残さなければ、指導者失格の烙印を押されてしまうからだ。

 高校サッカーには無情な側面がある。試合でボールを支配して相手を押し込んでも、80分で決着しなければPK戦で敗れてしまう。1年かけてつくってきたサッカーが、いとも簡単にそこで終了するのだ。だからこそ、黒田監督は青森山田高時代から勝利にこだわる指導をしていたし、プロ監督よりもプロフェッショナルな監督だったと言えるだろう。

 黒田監督は、プロ監督歴1年目の就任初年度でJ2を圧倒的な成績で制し、今年はJ1で堂々の首位をひた走る。「補強ができる資金があるから」という声もあるが、資金力があっても成績が伴わないクラブはいくらでもあることを忘れてはいけない。そして、それを許している他クラブの不甲斐なさに、批判が向くのが正しいベクトルなのではないだろうか。

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