「冷静じゃなかったかもしれない」昨季J1昇格を逃した清水エスパルス・秋葉忠宏監督が明かす今季の戦略とは (2ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

 清水は昨季、秋葉監督になってからは20勝6敗9分 だったが、終盤に藤枝MYFCやロアッソ熊本に負け、水戸に引き分けるなど、勝負弱さが指摘された。今年は、「勝負強さ」をテーマに掲げているが、それを実現するために、どんな取り組みをしているのだろうか。

――勝負強さを実現するために、どんな取り組みをしたのでしょうか。

「メンタル的なタフネスを求めるため、90分間相手を圧倒するため、フィジカルトレーニングのボリュームをかなり上げています。そのためにフィジカルコーチを2人体制にしました。ラクして勝てるならいいですが、勝負の世界はそんなに甘いもんじゃない。まずは、自分に打ち勝つ、キツいことから逃げないことをテーマに、かなり厳しい走るメニューをやってきました」

――「エスパルス陸上部」と言われるぐらい走るトレーニングが多いと聞きました。

「エスパルスの選手は技術レベルが高いんですが、我慢強さとか、辛抱とか、メンタル的なところが少し足りないのが昨年、見えたんです。甘えというか、どこかで自分から逃げているから、大事な試合を取りこぼしたりするんじゃないかと思ったんです。

 そのメンタルを強くするには、フィジカルのベースが必要なんです。練習は嘘つかないですし、練習量に裏打ちされた自信がすごく大事です。人がやりたくないことを逃げずにやりきる。それも1回ではなく、2年、3年を通して続けることでチームに強さが浸透していくと思うし、その厳しさに目を向けながら楽しむことも求めていくようにしています」

――具体的に、どんな練習をしたのですか。

「ボールを使用しない走りはもちろん、インターバル走やシャトルランなど、かなり走るトレーニングを増やしました。日本人はスピードがあるんですけど、スピード持久力が足りないとよく言われますし、スプリントの回数も外国人選手のほうが多いんです。僕はその両方を諦めたくないので、必然的に厳しい練習になります。

 もちろん年齢やポジションによってスピードや距離は変えますが、ギリギリのところを狙って限界を超えられるようにGPSを使って管理してやりました。試合後もGPSで距離とスピードを把握しているので、足りない選手は試合後のグランドが使える場合は、走らされています。『マジかよ』って選手は言いますが、その積み重ねが選手を強くしていくんですよ」

 フィジカルが強く、パワー系にシフトしているエスパルスだが、J1で上位に名を連ねるFC町田ゼルビア、鹿島アントラーズ、ヴィッセル神戸、サンフレッチェ広島もパワー系だ。そのスタイルは悪くないが、今季J2第16節の横浜FC戦と第18節のレノファ山口FC戦では、相手の出足の鋭さと球際での戦いに屈し、完全に後手に回った。

――強度が高いチームと戦うとプレーの精度が落ちて、苦戦する傾向にあります。

「そのとおりで、横浜FC戦も山口戦もGPSで見ると、スプリントも距離もいつもの平均以下でした。特に横浜FC戦は(相手が)前からくるのはわかっていましたし、『ここで勝てば(横浜FCとの)勝ち点差を15にできるので、かなり優位に立てる。ここで一気に(相手の)息の根を止めにいくぞ』という話をしたんです。

 でも、0-2という結果のとおり、圧倒されてしまいました。プレーの成功率も低くて、自分たちの繋ぐ展開がほとんどできなかった。もっとフィジカルが強くて、競り合いのところで負けなくなればプレーの成功率が下がることはないんですけど、まだギリギリのところで戦っているので、そこの弱さが試合に出てしまうんです」

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