現役引退後いきなりレノファ山口社長に就任 渡部博文氏に聞く「Jクラブのトップって何をしているの?」
渡部博文レノファ山口FC社長インタビュー(1)
「ゼロからのスタートだからこそ、チャレンジしたいです。不安はありますよ。でも、自分ができることがあると思っています」
2022年に現役引退を決意し、レノファ山口FCの社長に就任することになった渡部博文(36歳)は当時、そう心境を語っていた。
渡部はセンターバックとして、栄えあるプロキャリアを過ごしている。柏レイソル、栃木SC、ベガルタ仙台、ヴィッセル神戸、そしてレノファ山口FCで350試合以上に出場。タイトルにも恵まれ、天皇杯優勝2回、ヤマザキナビスコカップ、ゼロックススーパー杯では2回優勝した。
〈プロサッカー選手生活に幕を下ろし、Jリーグのクラブ社長に転身する〉
それはセカンドキャリアとして夢のある展開だった。ただし新しく違う世界に飛び込むことは簡単ではない。懐疑的な目も向けられたはずだが......。
現在は社長2年目。2年連続だった赤字を黒字に転換している。就任直後に歯止めをかけたことは大きい。そして今シーズンは営業収入(売上高)アップを見込んでいる。
同時に、成績も急上昇しつつある。今シーズンは7位(第22節終了時点)と健闘。スタジアム全体の熱気は確実に高まっている。
J2リーグで現在(第22節終了時点)7位と健闘しているレノファ山口FCのイレブン photo by J.LEAGUE/J.LEAGUE via Getty Imageこの記事に関連する写真を見る そこで今回、Jリーガーから転身した気鋭の社長に話を聞いた。
――渡部社長は現役引退を決めたあと、当時の社長である小山(文彦)氏(現会長)から社長就任の打診を受けたそうですが、引退後すぐに社長になる例はほとんどありませんよね。
「当時は引退を決意して、次のビジョンに向かって、というところで、道を模索していました。経営にはもともと興味があって、2021年に児童向けのデイサービスを行なう会社を立ち上げています。なので、そこをどう広げていくか、構想を練っていたんです。それが現会長に引退報告に行った際に、直接レノファの社長のオファーをもらって。それまでいろいろと頭を巡らせていたのですが、新たなルートに興味を抱きました。実は小さい頃、作文で『サッカークラブを持ちたい』という夢を書いたことがあったんです。社長はオーナーではないですけど、これって現実に近いことになるかもしれない。運命なのかなって」
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著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。