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来日5年目のDFトーマス・デンが「新潟での生活を気に入っている」理由「人々の振る舞いに共感」 (3ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi

【子どもたちと一緒にフットボールをする機会を作りたい】

 それと同時に、自身がフットボールに助けられたように、子どもたちにこのスポーツのすばらしさを伝えていきたいとも考えている。

「グラスルーツのレベルで、子どもたちと一緒にフットボールをする機会を作りたいと考えている」とトーマス・デンは柔和な表情で話した。

「プロになりたいかどうかもわからないような少年や少女たちと、楽しみながらボールを蹴りたい。おそらく僕は、そういった子どもたちにいいインパクトを与えられる気がするんだ」

 困難な幼少期を送ったからこそ、彼はそう思うのだろうか。あるいはその後にフットボールと出会って、望む生活を手に入れることができたからだろうか。いずれにせよ、その優しい眼差しと明確な語り口、そして様々な経験を持つトーマス・デンなら、ピュアな少年や少女たちに、とてもポジティブな影響を与えることができるだろう。

「『90プラス』というブランドも、子どもたちのことを思って始めたところがあるんだ。フットボール以上のものを目指しているからね」

 そう言った彼の目は、未来への期待に満ちていた。予定の時間が少し過ぎたので、別れの挨拶をして謝意を述べると、彼も「本当に感謝している。ありがとう」と返答した。
(おわり)

トーマス・デン 
Thomas Deng/1997年3月20日生まれ。ケニア・ナイロビ出身。幼少期にオーストラリアへ移住。メルボルン・ヴィクトリーのユースチームに加入し18歳でプロ契約。2015年にAリーグデビューを果たした。PSV(オランダ)でのプレーを挟んで、オーストラリアでは計4シーズンプレーし、2020年に浦和レッズに移籍。2シーズンプレーしたあと、2022年からはアルビレックス新潟に活躍の場を移してプレーしている。オーストラリア代表としても活躍していて、2021年東京オリンピック、2022年カタールワールドカップのメンバー。

著者プロフィール

  • 井川洋一

    井川洋一 (いがわ・よういち)

    スポーツライター、編集者、翻訳者、コーディネーター。学生時代にニューヨークで写真を学び、現地の情報誌でキャリアを歩み始める。帰国後、『サッカーダイジェスト』で記者兼編集者を務める間に英『PA Sport』通信から誘われ、香港へ転職。『UEFA.com日本語版』の編集責任者を7年間務めた。欧州や南米、アフリカなど世界中に幅広いネットワークを持ち、現在は様々なメディアに寄稿する。1978年、福岡県生まれ。

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