新潟DFトーマス・デンが語るJリーグで特に手を焼いた3人「信じられないくらい嬉しかった」 (3ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi

【予想が困難、ではなく、競争が激しいリーグ】

 今季はクラブ史上初のJ1に挑戦しているFC町田ゼルビアが序盤戦で首位に立つなど、面白い展開が繰り広げられている。国外のファンを含め、多くの人が"世界一予想の難しいリーグ"と呼ぶ所以だ。

「そうかもしれないけど、僕は予想が困難、ではなく、競争が激しい、と言いたい」とトーマス・デンはJリーグの印象を語る。

「そこに関しては、Jリーグは世界でも有数ではないかな。一昨季のJ2最終節でうちが下した町田の大躍進が、その好例だよね。どのチームにも、気を抜ける相手はいないはずだよ。ファンやメディアからすれば、これほど興味をそそられるトップリーグも珍しいだろう。欧州の多くのリーグのように、優勝するチームが大体同じようなリーグより、こっちのほうが絶対にエキサイティングなはずだから」

 そうした話は、オーストラリア代表のチームメイトとすることもあるという。町田に所属するミッチェル・デュークは今年のアジアカップの前に、イングランドのあるチームのトレーニングに参加し、当地の人々にJリーグの面白さを伝えていたという。

「ミッチェル・デュークはその時のチームメイトから『Jリーグってどうなの?』と訊かれるたびに、『君たちの想像を絶対に超えるよ』と答えていたんだって」とトーマス・デンはにこやかに話す。

「僕が今あなたに話したようなことを、イングランドの選手たちに言うと、彼らは耳を傾けていたらしい。欧州のフットボーラーもフットボールファンも、日本とJリーグを一度でも体験したら、きっと虜になると思うよ」

 オーストラリア人選手が、Jリーグのことを欧州で広める──近年、このスポーツにおける両国の関係はより強くなっている。それはどちらの国にも感謝するトーマス・デンにとって、実に喜ばしいことのようだ。

後編「トーマス・デンが語る日本の印象、生活」へつづく>>

トーマス・デン 
Thomas Deng/1997年3月20日生まれ。ケニア・ナイロビ出身。幼少期にオーストラリアへ移住。メルボルン・ヴィクトリーのユースチームに加入し18歳でプロ契約。2015年にAリーグデビューを果たした。PSV(オランダ)でのプレーを挟んで、オーストラリアでは計4シーズンプレーし、2020年に浦和レッズに移籍。2シーズンプレーしたあと、2022年からはアルビレックス新潟に活躍の場を移してプレーしている。オーストラリア代表としても活躍していて、2021年東京オリンピック、2022年カタールワールドカップのメンバー。

プロフィール

  • 井川洋一

    井川洋一 (いがわ・よういち)

    スポーツライター、編集者、翻訳者、コーディネーター。学生時代にニューヨークで写真を学び、現地の情報誌でキャリアを歩み始める。帰国後、『サッカーダイジェスト』で記者兼編集者を務める間に英『PA Sport』通信から誘われ、香港へ転職。『UEFA.com日本語版』の編集責任者を7年間務めた。欧州や南米、アフリカなど世界中に幅広いネットワークを持ち、現在は様々なメディアに寄稿する。1978年、福岡県生まれ。

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