「ミシャサッカー」は死なず 北海道コンサドーレ札幌は最下位からの巻き返しに自信あり (4ページ目)

  • 志田尚人●取材・文 text by Shida Naohito

【「ミシャサッカー」は死なず】

 ピッチ上で、相手に研究されていることを感じるような場面、対策を講じられた局面などももちろんある。実はそういう時こそがチャンスだと荒野は言う。

「相手があったうえなので、自分たちの思惑どおりにボールが動かせるわけではありません。逆にそれがチャンス。相手も狙いがあるので、だったら、それを破るためにこうしようとか考えたときに、新しいアイデアが生まれてくるんです。

 そのアイデアから逆に大きなピンチを招いてしまう場面もあります。けれど、ミシャはこういう前向きなミスについては何も言いません。むしろ、トライしたことを評価し、声をかけてくれるんです。サッカー観も変わりますよね。ミスを恐れることなく、自信を持ってプレーすること。いちばん変わったのは、そこです」

 攻撃面を向上させながら、ある程度、結果を積み上げてきたが、今季気になるのは、昨季までのような形でゴールを奪えていない点だ。それも荒野は一蹴する。

「昨季、主力選手が抜けた影響もあるでしょうけれど、はっきりと言えるのは、これがコンサドーレ。ここ数年、同じような状況に陥っても、やれているという実感があるから何とも思いません。自分たちは可能性のあるチーム。もうひとつ上に進むためには変化は必要だと思いますが、飛躍的な変化ができるのはやっぱりベースがあったうえでの話だと思うんですよね。

 自分たちのベースになるのはもちろん"ミシャサッカー"です。ピッチで今以上に何ができるか。試合中、ビッグチャンスは作れているので、その回数を増やしていければ、ゴールも自然に増えていくとのではないかと思います」

 攻守の可変という戦術的な側面だけではない。コンサドーレの監督となって7年目。今やペトロヴィッチ監督の理念、挑戦的な姿勢は、コンサドーレのDNAとなって選手たちに刻み込まれているようだ。

「ミシャサッカー」は死なず、である。

プロフィール

  • 志田尚人

    志田尚人 (しだ・なおひと)

    フリーライター。1968年生まれ、北海道出身。タウン誌編集者を経て、1996年にコンサドーレ札幌の誕生をきっかけにオフィシャルガイドブック、オフィシャル雑誌の編集長に就任。2002年からフリーランスに転身し、現在はサッカーと野球をメインにライターとして活動中。

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