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遠藤航がクロップ監督をも魅了するマネジメント術 身体的アドバンテージがなかったからこそ培った論理的思考 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【チームをどう動かすか】

 しかし欧州に渡って、ベルギーのシント・トロイデンでボランチに転向した時、センターバックとして積んできた研鑽が実った。

 まず、中盤で味方を動かしながらデュエルで勝つ、ということを90分間連続してやることができた。それは、センターバックという瀬戸際のポジションを戦ってきた経験のおかげだろう。培った強度を中盤に持ち込み、鍛錬してきたプレーセンスを生かした。

「ボールを持っている相手がどういう状態か、マークしているFWがどこにいるか。いい距離感が取れていると、ボールが出た時にインターセプトを狙いやすくなります。ファーストタッチでどこに置くのか、出し手はどこを見ているか、味方がどうプレッシャーをかけているか、いくつもの要素から狙いどころはいつも考えています」

 Jリーグ時代の遠藤はそう語っていたが、彼だけの間合いをつかんだのだ。

 もっとも、遠藤がたどり着いたボランチの境地は、論理的思考でたどり着いたチームマネジメントにある。

「攻守両面で前向きにプレーさせられました」
「前の選手には攻撃で存在感を出してほしい。仕掛けられる選手たちを守備で消耗させないように......」
「自分はリスクマネジメントをしながら、セカンドボールを拾えるか、守備のバランスを取るところで......」

 冒頭の証言と同様、カナダ戦後の遠藤は語っているが、その思考は「チームをどう動かすか」に集約されている。個人としてセンターバックでの研鑽は、今のデュエルやパスの配球につながっているが、その本分はチームプレーヤーとしての矜持にある。

 それがリバプールの名将ユルゲン・クロップ監督をも魅了しているのだ。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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