ヴィッセル神戸は敗れても「問題なし」 選手たちが選んだプレーモデルにこだわる (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【終盤は押し込んでパワープレーに】

 柏にとっては、講じた策が的中した形と言えるだろう。もっとも、神戸陣営も十分に勝つ算段はできていたという。

「前半から対応はされていましたが、ボディブローのように効いてくるだろうな、と思っていました」

 そう語ったのは酒井だ。

「前半(の出来)はそれほど問題視していなくて、後半になったら相手が疲れてチャンスが増えてくるだろうな、と思っていました。実際、作ったチャンスは少なくなかったですし、"やり方が問題ではなかった"と思っています」

 後半に入ると、神戸は交代カードを切るたび、優位に立った。右サイドで酒井が張り出し、交代出場の武藤嘉紀が危険なスペースに飛び込み、山口蛍がセカンドを狙う。力の差を見せつけつつあった。しかし、そこでスキが生じる。

 後半38分、敵のロングボールに対し、神戸の選手はふわっとヘディングで競りにいったが、相手と交錯して触れない。また、もうひとりは左サイドでラインを出そうなボールを追ったが、柏の選手が執念で残したプレーに抗えなかった。そして右からのクロスに、木下康介にフリーで走り込まれてしまい、決勝点を叩き込まれた。

「どっちに転ぶかの勝負っていうところですね」

 酒井はそう振り返ったが、歴戦の選手らしかった。

「たとえばボールを跳ねさせるかどうか、とか、ひとり行ったら2人、3人が連動しているか、とか。(ラインからボールを)出さない、追いかける、寄せるという最後の1メートル(の差で)で、(相手に)少ないチャンスで決められたと思います。自分たちに慢心はないけど、たとえば相手のセンターフォワードはすごい勢いでブロックに来ていました。自分たちが先手を取るには、"ルーズボールでいいか"とかではなくて、当たり前にやってきたことを当たり前にやることで......」

 最後の10分、神戸はたて続けに決定機を作っていた。大迫、武藤、宮代大聖、ジュアン・パトリキ、大迫。少なくとも4回、5回とゴールに迫った。押し込んでのパワープレーは、Jリーグでも出色だ。

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