槙野智章が一緒にプレーしてスゴいと思ったDF10人「変態」「覇気が出てる」選手たち (5ページ目)

  • 吉崎エイジーニョ●取材・文 text by Yoshizaki Eijinho

【マネできないタイプ】

2位 森重真人(FC東京)

 森重真人選手は、 ずっと僕のライバルですね。小学校の時から知っています。ずっと一緒にFWやって、中学生では2トップ組んで、気づいたらふたりともCBをやって。お互い何やってるんだと思いながら...。

 広島の小さな町からふたりでずっと一緒にやってきました。気づいたらJリーグや日本代表でもCBを一緒にやってて。「人生、何があるかわかんないね」みたいな話をしたりして。

 DFとして学ぶべきことが多い存在です。1回も彼について「自分が超えた」って思ったことはないですね。マネるというよりも「意識していた」が正しいです。彼の存在があったからこそ頑張れたし、彼よりもうまくなりたい、強くなりたい、日本代表になりたい、という思いがあったからこそ、ずっとやれたって思っています。いなかったらどうなっていただろうと、ちょっとゾッとしますね。

 彼の実際のプレースタイルは、ファイターですね。スイッチが入った時の森重は、人が変わります。いい意味ですよ。だから、自分のマークする選手に対しての強く行くところもそうですし、あとはやっぱり元々FWですから、見ている位置とかキックの球種の蹴り分けなんかもものすごくうまい。

 セットプレーでもターゲットマンになって点が取れますからね。まあ、いつかまた一緒に2トップを組みたいなと思いますけどね! めっちゃやりやすいFWでした。俺たち、ずっとFWやってたらプロになれてたのかな...。

1位 遠藤航(リヴァプール)

 今や日本代表のキャプテンで、世界のリヴァプールのアンカーとして有名な遠藤航ですが...僕は浦和で目にしたCBとしての彼を1位に挙げます。

 浦和レッズで一緒にDFラインを組みました。湘南ベルマーレの時代からいい選手だとは思っていましたが、実際に組んでみるととにかく止めるんですよ。

 1対1で止める。当時のチームは「守備ラインが相手を止められなかったら、ゲームも勝てない」というくらいに相手のキーマンを抑え込む戦い方をやっていたので、なおさらその強さが際立ちました。対人能力もそうですし、フィードもそうですし、ゴールも取れるということで、いろんなDFを見てきましたが1番じゃないですかね。

 彼についてはデュエルということがよく言われます。これがどうすごいのかと言うと、思いっきり体をぶつけて「ドン!」っていう感じじゃなくて、体の入れ方とかタイミングがうまい感じです。

 賢いんですよ。どこで体を当てたらいいのかを考えている。何もかも力任せにやるタイプじゃないですよ。マネできないタイプですよ。

 仮に一般のサッカー選手が、遠藤航を前にしてボールを持ったとしたら...何もできずに、その「覇気」にビビってボールを失うと思います。

「遠藤航が近くにいる」っていうプレッシャーだけで圧倒されるでしょう。なんかやるぞ、やられると怖いぞ、といった覇気を体中からメラメラと発してプレーしているんですよ。たぶん、体を当てられる前にボールを取られてますよ。

 DFとしてゴールを守る守備と、ボランチとして相手のボールを奪う守備は当然違います。今はボランチとして知られる彼ですが、最後の砦となり、ゴールを守る守備でもスゴかった。

 DFラインの上げ下げのところも絶妙にうまかったですし、ヘディングでも栗原勇蔵と同じで「空中で止まれる」あるいは「相手の高さを利用して上から叩ける」タイプでした。

 前に出ていく能力もスゴい。DFとボランチの両方ができる人ってあんまりいないですよね。僕は浦和での彼を見る限りでは、CBやサイドバックで成功するんだと思っていました。

後編「槙野智章が選ぶ対戦してスゴいと思ったFWトップ10」>>

槙野智章 
まきの・ともあき/1987年5月11日生まれ。広島県出身。サンフレッチェ広島ユースから2006年にトップチームに昇格。DFとして攻守に渡る活躍を見せ、2010年からケルン(ドイツ)、2012年から浦和レッズ、2022年にはヴィッセル神戸でプレー。J1通算415試合出場46得点を記録。Jリーグベストイレブンには3度選ばれた。日本代表では国際Aマッチ38試合出場4得点。2018年ロシアW杯に出場した。2022年の現役引退後は、タレント、解説者、指導者として活躍中。

プロフィール

  • 吉崎エイジーニョ

    吉崎エイジーニョ (よしざき・えいじーにょ)

    ライター。大阪外国語大学(現阪大外国語学部)朝鮮語科卒。サッカー専門誌で13年間韓国サッカーニュースコラムを連載。その他、韓国語にて韓国媒体での連載歴も。2005年には雑誌連載の体当たり取材によりドイツ10部リーグに1シーズン在籍。13試合出場1ゴールを記録した。著書に当時の経験を「儒教・仏教文化圏とキリスト教文化圏のサッカー観の違い」という切り口で記した「メッシと滅私」(集英社新書)など。北九州市出身。本名は吉崎英治。

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