清水エスパルスはなぜ、目の前にあったJ1昇格を逃したのか「何かを変えなければ、ずっと同じことが繰り返される」
無情のホイッスルが鳴った。
1-1のドローで終わったJ1昇格プレーオフ決勝。J2リーグ3位の東京ヴェルディが16年ぶりのJ1昇格を決めた一方で、同4位の清水エスパルスは1年でのJ1復帰を果たすことができなかった。
清水のDF鈴木義宜は人目もはばからず号泣し、MF神谷優太はユニフォームをまくり上げて顔を覆い、嗚咽していた。秋葉忠宏監督は、ベンチの選手、スタッフ、控えの選手の全員とタッチをかわしたあと、ひとりベンチに座り、ペットボトルを口にして、しばらくピッチを見ていた。
1年でのJ1復帰を果たせなかった清水エスパルス。photo by Kishiku Toraoこの記事に関連する写真を見る「清水エスパルスはJ2にいるようなチームじゃねぇ」
そう言って、監督になって約8カ月。たどり着いた先は、とてつもなく厳しく、冷たい現実だった。
「コミュニケーションが大事」
監督就任時、秋葉監督はそう語った。
J2に降格した今季、選手を戦術の枠に封じ込めていた前任のゼ・リカルド監督は結果を出せず、第7節を終えて解任。その直後、19位とどん底に喘いでいたチームの監督になった秋葉監督がすぐに取り掛かったのが、窮屈なサッカーを強いられてきた選手との対話であり、気持ちの解放だった。
「こんな状態で引き受けたんで、格好なんてつけている場合じゃない。他人行儀ではなく、俺は自分らしい言葉を使って選手とコミュニケーションを取っていく。俺は聖人君子でもないし、能力がなくクズだと思っているので、それを別に隠す必要なんてない。『助けてほしい』『みんなの力が必要だ』って、嘘偽りのない言葉で伝えてスタートした」
秋葉監督の姿勢に、選手の冷めていた心にも血が通い始めた。
個々の能力を重視し、秋葉監督と選手が共同作業で作り上げたのが、MF乾貴士をトップ下に置く、4-2-3-1の超攻撃的サッカーだった。自分たちの感覚を生かせるサッカーの実現で選手のモチベーションが爆上がりし、それが秋葉監督就任からリーグ戦8戦負けなし(6勝2分け)の快進撃につながった。
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