東京ヴェルディが示すJ1昇格以上の価値 J2の15年間にも「緑の勇者」は日本サッカー界に多大な貢献を果たしてきた (2ページ目)
中島翔哉、前田直輝ら、他のJ1クラブを経て海を渡った選手もいれば、畠中槙之輔、渡辺皓太のようにJ1制覇に大きく貢献した選手もいる。
最近では、山本理仁、藤田譲瑠チマというパリ五輪世代の中心選手が、東京Vのアカデミー育ちだ。
その他も含めてJ1クラブ、あるいは海外クラブでプレーする現役選手は数多く、仮にJクラブがアカデミー出身者だけでチームを編成するとしたら、おそらくJ最強チームが完成するのは東京Vで間違いないだろう。
三笘薫が川崎フロンターレで、遠藤航が湘南ベルマーレでそうであるように、アカデミー出身者の活躍は、たとえそれが他クラブでのものであっても、それぞれのクラブの"勲章"であることに変わりはない。
加えて、ある特定の時期に限らず、現在進行形でコンスタントに優れた選手を輩出しているという点においても、東京Vの育成力は特筆に値する。
とはいえ、結果として卓越した育成力が仇となり、トップチームの戦力を安定させることが難しくなったことも否めない。
「このチームは毎年主力が流出している。私が就任した去年も、夏に2人、オフに4人が移籍した。シーズンが終わったら主力がいなくなるのが当たり前だった」
チームを率いる城福浩監督がそう話しているとおりだ(移籍した全員がアカデミー出身選手だったわけではないが)。
J1クラブから求められるほどの選手がアカデミーから育っていることは誇らしい反面、喜んでばかりはいられない現実があるのもまた事実。皮肉なことに、育成が成果を挙げれば挙げるほど、トップチームの強化は厳しい状況へと陥っていった。
東京Vが最後にJ1を戦った2008年からJ1復帰まで15年もの月日を要したのは、育成の大きな成果と表裏一体の代償を支払わされたことと決して無関係ではないだろう。
しかしだからこそ、そんな東京VがついにJ1昇格を手にしたことには、名門復活というだけではない意味がある。
今季J2で常に上位争いを繰り広げてきた東京Ⅴは、J1自動昇格となる2位以内に入ることはできなかったが、J1昇格プレーオフ進出クラブでは最上位となる3位を確保。J1昇格プレーオフ決勝では清水エスパルスと1-1の引き分けに終わったものの、"引き分けでも勝ち上がり"というリーグ戦上位のアドバンテージを生かし、今季J1昇格筆頭候補だった清水を退けた。
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