横浜FCは本当に「弱かったから」降格したのか 報いを受けた「弱者の兵法」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 12月3日、鹿島。横浜FCは敵地に乗り込んで鹿島アントラーズと戦い、力及ばず2-1と敗れている。すでに実質的には最下位での降格は決まっていた(勝利し、得失点差12をひっくり返さないと柏レイソルを逆転できなかった)わけだが、来季のJ2が決定した。

<J2からの昇格チームで、戦力的に非力だった。開幕後にJ2得点王のエース、小川航基の移籍もダメ押しに......>

 横浜FCの降格は、そう言って片づけられるのだろう。下馬評も低かった。開幕前から降格の最有力候補に挙げられ、そのとおりになっただけとも言える。

 しかし、横浜FCは予算的にJ1最下位クラブではない。たしかに下位ではあるが、卑屈になるほどではなかった。今年6月に小川を失ったのは痛手だが、戦績だけで言えば、それ以降のほうが勝ち点を稼いでいる。

 本当に彼らは「弱かったから」降格することになったのか。

J1最終節で鹿島アントラーズに敗れ、J2降格が決定した横浜FCの選手たち photo by Kyodo NewsJ1最終節で鹿島アントラーズに敗れ、J2降格が決定した横浜FCの選手たち photo by Kyodo Newsこの記事に関連する写真を見る 今年5月、筆者はこんなタイトルの記事を書いている。

「横浜FC、森保ジャパンスタイルで降格圏脱出 開幕10戦勝ちなしで生まれた『背水の覚悟』とは?」

 10戦勝ち星がなかった横浜FCは、第11節にアルビレックス新潟を下し、ようやく勝ち星を挙げた。そこから急速に挽回。第14節、本拠地ニッパツで強豪、川崎フロンターレを2-1と下した試合の後の記事だ。

 横浜FCは開幕以来、主体的にパスを回して優位に試合を進める戦いを目指していたが、布陣もコンセプトも変更していた。実質5-4-1の人海戦術で、守備を分厚くしたカウンター戦法に切り替えた。前線からのプレッシングよりも、うしろでブロックを作り、受け身で守りながら相手のミスを誘い、勝機を探る"弱者の兵法"だった。

「いつか点が入る」

 川崎戦がそうだったが、敵のそうした甘さに付け込むのだ。

 構造・概念自体は、カタールW杯で森保一監督率いる日本代表がドイツ代表、スペイン代表という強豪から金星を挙げた戦い方と酷似していた。5-4-1で人垣を作って守りを固めてじっと耐えながら、ウイングバックで奇襲を仕掛け、前線のアタッカーに一撃を託す。ドイツ、スペイン戦では、三笘薫、堂安律が決定的仕事をやってのけた。圧倒的に攻める敵の油断を突いた形だ。

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