横浜FCは本当に「弱かったから」降格したのか 報いを受けた「弱者の兵法」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【勝てる相手に勝てなくなった】

 それはひとつの戦い方と言える。だが、"必勝の仕組み"にはならない。あくまで相手のミス次第という偶発性が強く、森保ジャパンが格下と見られるコスタリカに呆気なく敗れたのは、その証左だ。

 つまり、勝てるべき相手に勝てなくなる。短期決戦のチャレンジャーだったら、その魔法で乗りきれるかもしれない。しかし、リーグ戦という長期戦では必ずぼろが出る。

 横浜FCは攻められる展開になるほど、"弱者の強さ"を発揮した。第22節のヴィッセル神戸戦は、約3割のボール支配率で2-0と勝利。第25節の横浜F・マリノス戦は、先制点を浴び、圧倒的に攻められながらも、なんと4-1と逆転で勝った。第30節のFC東京戦、第32節のサガン鳥栖戦も展開は同じだ。

 一方、互角の相手には、"弱者の兵法"が通じなかった。ボールを持たされてしまい、むしろ苦しんでいるように映る。ボールを握って、つなげる強度が単純に低い。たとえば天王山と言われた前節の湘南ベルマーレ戦も、リードされたあとに慌てて反撃に出ようとして、ビルドアップをたびたびひっかけられ、危機に陥っていた。パワープレーしか活路がなく、なすすべなく敗れたのだ。

"弱者の兵法"は劇薬である。一定の効果は望めるが、それに拘泥していくことで、根源的なサッカーの力は弱まる。よほど監督に求心力があるか、もしくはチームとしてのスタイルでなかったら、ポゼッションを半ば放棄することは「報いを受ける」ことになる。サッカーボールを蹴ることは、そのものが選手にとってはエネルギーの元であり、それを手放すことになるのだ。

 たとえばアトレティコ・マドリードのディエゴ・シメオネ監督のように、鉄の意志で「勝つだけが正義」に突っ走れるなら、違うフェーズの戦術になる。徹底的なリアクション戦術と猛攻を仕掛ける時のスイッチを切り分け、そのために戦闘力の高い選手を集める。それによって、堅固なディフェンスと斧のようなカウンターを武器(森保ジャパンに三笘がいたように)に"弱者の兵法"は"強者の軍略"となるのだが......。

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