東京ヴェルディが示すJ1昇格以上の価値 J2の15年間にも「緑の勇者」は日本サッカー界に多大な貢献を果たしてきた

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 J1からJ3までJリーグには日本全国に多くのクラブがあるなかで、誤解を恐れずに言えば、東京ヴェルディは必ずしもJ1に昇格する必要のないクラブだった。

 もちろん、彼らがそれを目指していないとか、それにふさわしい力がないとか、言いたいわけではない。J1に昇格せずとも、Jクラブとしての本分のひとつである選手育成において際立つ成果を残している、という意味においてである。

 Jリーグに属するクラブの多くは、日本最高峰リーグであるJ1を目指し、そこでの優勝を夢見ているはずだ。必ずしもそうではないクラブがあっても、それぞれの目標に応じてチームを強くしたいという気持ちに変わりはないだろう。

 チームの「強化」は、Jクラブとしての本分。何より強化し続けなければ、J1にたどり着くどころか、J3にとどまることさえままならなくなる。

 だが、それと同時に、Jクラブには選手の「育成」も求められている。

 Jリーグが各クラブにアカデミー(育成組織)の保有を義務づけているのは、単にトップチームが強くなればいいというのではなく、選手育成もまたクラブの大事な役割だと考えているからだ。

 現在Jリーグでは、J1からJ3のカテゴリーによって人数の違いはあれど、ホームグロウン(HG)選手の登録も義務づけられている。

 HG選手とは、ひと言で言えば、クラブが自前で育てた選手のこと。21歳までの間に3年以上在籍することで、そのクラブのHG選手としての条件を満たすことになるが、その多くはアカデミー出身者である。

 しかし、アカデミー出身の選手をトップチームで活躍するまでに育てるのは、決して簡単なことではない。

 参考までに今季J2最終節全11試合のメンバーリストを見てみると、控えも含めた登録メンバー18人のなかにHG選手が2人以下だったクラブは16もあり、うち6クラブは1人も入っていなかった。強化と育成の両輪を駆動させ、クラブを運営していくことが、どれほど難しいかを物語る数字だ。

 そんななか、東京Vのそれは4人。ジュビロ磐田の8人、大宮アルディージャの7人に次ぐ人数のHG選手が登録されているのである。

 しかも、東京Vにおいて特筆すべきは、自前のアカデミーで育てた多くの選手をトップチームでプレーさせているだけでなく、上位カテゴリーであるJ1のクラブから求められるほどの選手を多数育てていること。つまりは、他クラブで活躍しているアカデミー出身選手が非常に多いということだ。

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