湘南ベルマーレのタリクはノルウェーに移住した少年時代「サッカーがカギ」だった

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi

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湘南ベルマーレ タリク インタビュー 中編

2020年から湘南ベルマーレでプレーするタリクは、少年時代にモロッコから移住したノルウェーでプロデビューし、ノルウェー代表チームでも長くプレーしている。ここでは移住先での体験や、現在トップクラスの選手を輩出している同国のフットボールについて語った。

前編「タリクが絶対に平塚に住みたいと思った理由」>>
後編「タリクが日本人選手にもったいないと感じていること」>>

【ノルウェー生活の最初は天と地がひっくり返った感じ】

 1969年からノルウェーで仕事をしていたタリクの父はある時、こう考えた。祖国モロッコよりも、この北欧の国のほうが教育水準は高く、職業の選択肢も広い。これまでは出稼ぎと帰国を繰り返していたが、おそらく家族全員で移住したほうがいいだろう、と。

 そして温暖な地中海南岸から、冬にはほとんど陽が見えなくなるノルディック地方へ、タリクとその家族は居を移した。彼が10歳の頃だ。

タリクが自身の少年時代とノルウェーのフットボールを語ったphoto by Kishiku Toraoタリクが自身の少年時代とノルウェーのフットボールを語ったphoto by Kishiku Toraoこの記事に関連する写真を見る「まったく異なる世界で生活を始めたのだから、本当に大変だったよ。天と地がひっくり返ったような感じだった」とタリクは打ち明ける。

「北アフリカのモロッコは暖かく、僕らは年中、母に呼ばれるまで外で遊んでいた。でもノルウェーは寒い国だ。特に冬は酷寒なうえ、昼でもずっと薄暗い。朝8時に家を出る時も、午後4時に帰宅する時も、夜みたいに暗いんだ。初めの頃はものすごく辛かった。モロッコの友だちに会えなくて、寂しかったし」

 当時はまだ国外からの移住者が少なく、編入した学校では好奇の視線に晒されたという。言葉もまったくわからなかった。肌の色も違う。否応なしに、痛烈な疎外感を覚えた。

 だがある日の昼休みに、すべてが変わる瞬間が訪れた。

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著者プロフィール

  • 井川洋一

    井川洋一 (いがわ・よういち)

    スポーツライター、編集者、翻訳者、コーディネーター。学生時代にニューヨークで写真を学び、現地の情報誌でキャリアを歩み始める。帰国後、『サッカーダイジェスト』で記者兼編集者を務める間に英『PA Sport』通信から誘われ、香港へ転職。『UEFA.com日本語版』の編集責任者を7年間務めた。欧州や南米、アフリカなど世界中に幅広いネットワークを持ち、現在は様々なメディアに寄稿する。1978年、福岡県生まれ。

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