アレクサンダー・ショルツが欧州でなく浦和への移籍を選んだ理由 いつ日本に興味を持った? (2ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

【浦和からのオファーには即決した】

「私は以前から、ヨーロッパ以外の国でプレーしたいと思っていたんだ。そして2019年12月の休暇中に、ベルギー(のロケレン)でプレーしていた時に友だちになったジュニオール・ドゥトラの試合の観戦を兼ねて、日本を訪れた。

 それはヴィッセル神戸と清水エスパルスの天皇杯準決勝で、スタンドに座っていた私は『ワオ、これはすばらしい雰囲気だ。最高じゃないか』と感じていた。すると隣にいた友人の母が、『あなたも日本でプレーするべきよ。性格的にも、きっと日本に向いているわ』と言ってくれてね」

 それからJリーグのことを気にかけるようになり、何度か欧州と日本の代理人に相談したという。そして2019-20シーズンの国内リーグを制し、翌2020-21シーズンは優勝こそ逃したものの、前述のようにCLで活躍し、リーグ戦の個人賞も獲得した。

「その1年半ほどは、ずっと調子がよかったので、存在感を示せたと思う。私は代表に招集されたことはあるが、試合に出てはいないので、名前を知られることが重要だった。すると浦和からオファーが届いたので、私は即決したよ。長期的なプランとして思い描いていた通りに、物事は進んでいった」

 でも彼の周囲には、その選択に驚いた人もいたのではないか。直前のシーズンにCLで2得点したフットボーラーが、欧州でキャリアを高めていくのではなく、極東で新たに冒険を始めるという決断に。

「私は小さな頃から、自分の信じる道を進んできた。もちろん周囲の人に耳を貸すこともあるが、いつも最後は自分で決断してきたんだ。それに私は自分の実力を現実的に捉えていた。欧州はフットボールの中心で、競争が極めて激しい。私は自分自身を"ヨーロッパリーグレベル"と捉えていた。それくらいのクラブに移籍することはできても、もうその上の領域に達するのは難しいと感じていたんだ。

 であれば、欧州の似たようなクラブに行くより、以前から興味のあった日本でプレーしたいと思った。この国なら、私の家族が幸せに生活する姿を想像できたしね。それに、ひとつ知っておいてほしいのは、私はデンマークのリーグから来たということ。日本の選手やファンのなかには、欧州はどの国のリーグもJリーグより優れていると思っている人もいるが、デンマークのリーグはJリーグよりレベルが高いわけではない。

 また逆に欧州では、日本のリーグのことをちゃんと知っている人が少ないから、年齢を重ねた後に移ってきても活躍できると思っている人が多い。でも実際は違う。そんなに簡単にプレーできるリーグではない。

 いずれにせよ、これは私自身の決断だ。それが正しかったことは、すでに証明されている。アジア最大のクラブのひとつで大観衆のサポートを受けながらプレーでき、AFCチャンピオンズリーグまで制することができたのだから。なにより、私はここで大いに楽しんでいるよ」

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