イニエスタがJリーグに与えてくれたもの 福田正博が子どもにマネしてほしいプレーとは

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Fujita Masato

福田正博 フットボール原論

■7月1日に、アンドレス・イニエスタのJリーグ最後のゲームが行なわれる。2018年の来日以来、日本サッカーに多大な影響を与えた彼の功績を、福田正博氏に聞いた。

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【閉塞感のあったJリーグを救った存在】

 アンドレス・イニエスタのJリーグでの最終試合が迫ってきた。7月1日にヴィッセル神戸の本拠地ノエビアスタジアム神戸で行なわれる北海道コンサドーレ札幌戦が、イニエスタのプレーをJリーグで見られる最後の機会になる。

 堅守速攻で首位争いをする好調な神戸にあって、今季のイニエスタのJ1でのプレーは途中出場の3試合のみ。だが最後は、サッカーファンがイニエスタのプレーを存分に堪能できる出場時間があればいいなと思っている。

 イニエスタが2018年に神戸に加入してから、Jリーグにもたらした功績は多大なものがある。タイトル獲得こそ2019年の天皇杯だけだが、2度のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場など、神戸を栄光に導いた。さらに、彼がバルセロナ退団後の次の舞台にJリーグを選んだことで、世界からJリーグそのものへの注目度は飛躍的に上がった。

 思い出してもらいたいのは、イニエスタが神戸への入団が決まった当時のJリーグの状況だ。日本代表の主力選手たちは海外リーグでプレーし、Jリーグには話題の中心になる華やかな存在がおらず、世界はもとより、国内からの注目度も低い状況にあった。

 海外組が多い点はいまも変わらないどころか、加速した感さえあるが、それでも2018年当時よりもJリーグに対しての閉塞感はない気がする。

 その違いを生んだ大きな理由は、やはりイニエスタの存在だ。彼が神戸でプレーをしてくれたことで、スタジアムに足を運んでみようという気にさせてくれた。

 観客に限らず、神戸以外のクラブ関係者にとってもイニエスタは足を向けて寝られない存在だった。よく耳にしたのが、イニエスタのいる神戸がやって来るとチケットの売上枚数が大きく変わったということ。

「イニエスタ効果」は所属する神戸だけではなく、対戦相手にも大きな恩恵をもたらし、またそのなかで「Jリーグっておもしろいじゃないか」と気づき、ほかの試合にも足を運んでくれるようになった観客は少なくないはずだ。

 イニエスタが神戸に加入し、それに続くようにフェルナンド・トーレス(サガン鳥栖/2018-2019)がJリーグでプレーし、ダビド・ビジャ(神戸/2019)までもがJリーグをキャリアの最後のリーグに選んだ。

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