中村憲剛&佐藤寿人の日本代表「世代交代論」 ザッケローニ時代「このままフェードアウトさせるつもりなのかと」 (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

寿人 葛藤しますよね。ベテランだろうが若手だろうが、試合に出られない悔しさは一緒ですから。

憲剛 ただ、ベテランで出られなくなると、そうとう焦った。若い時は挽回できるけど、ベテランでそうなると、よっぽどじゃないと取り返せない。「若手に代えていきたいのかな?」というクラブの思惑も感じるわけですよ。

 僕は36歳でMVPを獲りましたが、次の年に風間(八宏)さんから鬼(鬼木達)さんに監督が代わって、キャプテンが(小林)悠になって、アキ(家長昭博)と阿部(浩之)ちゃんが来た。アキは当時、大宮でトップ下だったので、ポジションがモロかぶり。これはもう、完全に俺の首を取りにきているなと(笑)。それまでの選手生活で一番、危機感を感じた瞬間でした。

── 実際にそうだったんですか?

憲剛 クラブからは「そんなつもりはなかった」と、あとから言っていましたが、僕は思いっきりそう思っていました(笑)。この年齢でそのクラスの選手が入ってきたら、そう思わないほうがおかしいでしょう。なんせ、あの家長昭博ですよ。阿部ちゃんもいい選手ですし。これは俺、ポジションがなくなってもおかしくないなと思いました。

 でも結果的に、その危機感がすさまじい刺激になってさらに成長できたし、彼らの存在がクラブに初めてのタイトルを獲らせてくれました。そういう刺激は、若手も、ベテランも等しくほしいんですよ。どうしてもベテランになると、刺激は減っていきますから。

寿人 言われることがなくなりますからね。自分で律していくしかない。自分に何が足りないのかを考えても、結果を出せば出すほど、それが見つけにくくなる。

── 憲剛さんは、引退するまでポジションを取られたイメージがないのですが。

憲剛 正確に言うと2019年は脇坂泰斗が台頭してきて、(田中)碧も出てきた。前十字じん帯を切ったのは2019年11月ですけど、その年は春先からACLも含めてチームにケガ人が多く出たこともあって、前年よりも長く試合に出ていたんです。

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