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Jリーグ30年で忘れられない横浜F・マリノスの時代を超えてつながる敗戦 優勝目前の最終節で「魔物を見た」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLO

【残り2試合で浮足立つ】

 2003、04年に岡田武史監督が率いて連覇した「難攻不落」の伝統が残るチームで、横浜FMは首位を突っ走っていた。シーズン残り2試合、2位サンフレッチェ広島に勝ち点差5をつけた時、「優勝は決まり」の雰囲気になった。「ひとつ勝てば優勝、広島が2引き分けでも自力優勝」と圧倒的優位な条件だった。

 ホームでのアルビレックス新潟戦では、J1史上最多の6万2千人を超える観衆が期待感を持って集まった。舞台は整っていた。ところが、この一戦で横浜FMは0-2と敗れる。

「全体的にどこか浮足立っていて。どうにかしようと思いましたが、自分のプレーもよくなくて」

 そう洩らしたのは、小林だった。選手たちは気を抜いていたわけでも、気負いすぎたわけでもなかったが、何かが決定的にズレていて、多くの選手がシーズン最悪のプレーだった。

「切り替える」

 ほとんどの横浜FMの選手たちは、よくある言葉を呪文のように唱えていたが、"祭りを祝えなかった"ショックは拭えなかった。

 2013年12月、等々力競技場。最終節の川崎戦、横浜は序盤に中村俊が決定機を演出している。自陣から送った裏側への縦パスの精度は回転がかけられ、彼らしく出色だった。右サイドバックの小林が抜け出し、ボールを頭で突いて内側へ前を取ったが、必死に体を投げ出したディフェンスにブロックされ、こぼれ球に詰めたマルキーニョスのシュートも、GKに防がれた。

 その後、ホームの川崎がペースをつかむ。レナトの左足FKがクロスバーに当たり、中村憲剛が相手ボールをペナルティーエリアの外側で奪い、ミドルを放つ。勝つしかない横浜FMに対し、ボールを握ってストレスを与えていた。

 そして後半9分、エースの中村俊がやや無理をして、右サイドからインサイドへボールを運ぼうとしたところだった。敵エースの中村憲に体を寄せられて、ボールを奪い取られる。攻撃のスイッチを入れて前がかりになっていた横浜FMは、完全に裏返される。

 小気味よくボールをつなげる川崎のカウンターに追いすがるが、敵FW大久保嘉人にブレ球のミドルを打たれると、GKが処理しきれずにこぼしたボールを拾われ、エリア内に駆け込んできたレナトに折り返しを突き刺された。

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