「サイドバックであり、ウイングであり、そしてストライカー」浦和レッズの快進撃を支える酒井宏樹と興梠慎三

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

 激しいボディコンタクトを受け、ボールを失うシーンを見るたびに、衰えを感じずにはいられなかった。浦和レッズの興梠慎三のことである。

 今季、北海道コンサドーレ札幌から復帰した興梠は、鋭い動き出しと巧みなフィニッシュワーク、そして身体の強さを生かしたポストワークを武器に、長くトッププレーヤーとして活躍してきた。J1通算163得点は大久保嘉人(191得点)に次ぐ歴代2位で、Jリーグ史上屈指のストライカーであることは言うまでもない。

浦和レッズで存在感を示す酒井宏樹浦和レッズで存在感を示す酒井宏樹この記事に関連する写真を見る もっとも2021年はわずか1得点に終わり、札幌に移籍した昨季も5ゴールを記録したものの、全盛期と比べれば物足りない数字に終わっている。

 今季は開幕から2試合続けてベンチスタートだったが、3節のセレッソ大阪戦からスタメン出場を続ける。しかし、期待されたゴールがないまま、6節の柏レイソル戦を迎えた。

 1トップに入った興梠は身体を張ったポストプレーや背後を狙う動きで、5バックを敷く柏の守備網をこじ開けようと試みた。しかし、20歳前後の柏の若きセンターバック陣を前に、ボールを受けてもつぶされるシーンが目についた。今までであれば相手を背負いながらも前を向き、局面を進められていただけに、あっさりとボールを失う姿に苦悩がにじんだ。

「今日は僕もそうですけど、ボールロストが多かった」

 起点となるべき仕事を求められながらも、その役割を全うできず、浦和の攻撃はしばし停滞した。

 ところが、そんな閉塞感を打破したのもまた、興梠だった。

 前半終了間際の44分、左サイドの関根貴大からのクロスを受けると、巧みなトラップから反転し、キックフェイントでタイミングをずらしたシュートを柏ゴールに流し込んだのだ。積み重ねてきた老獪さが、柏の若手を翻弄した瞬間だった。

 ようやく生まれた今季初ゴールに興梠は「チームのことを考えるとFWが点を取ったほうが勢いづくので、そういう意味では取らなきゃいけない気持ちはありますけど、焦りというものは特になかった。ただ、多少はホッとしたかなと思います」と、安堵した。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る