川崎フロンターレ、王座奪還への必須条件。鬼木達監督が新キャプテン・橘田健人に伝えたこと
愛しているJ! Jリーグ2023開幕特集
橘田健人(川崎フロンターレ)インタビュー後編
◆前編はこちら>>橘田健人が「ずっと避けてきた」キャプテンを引き受けた理由
プロ3年目の24歳、川崎フロンターレ史上最年少でキャプテンに就任した橘田健人は言う。
「これはキャプテンになったからとかではなく、今シーズンはもともと自分が試合に出続けて、チームを優勝させたいと思っています」
プレーでチームを引っ張ると語ってくれた理由であり、思いだった。
3連覇を目指していた昨シーズンのJ1最終節、逆転での優勝を信じて戦ったFC東京戦──。
試合は3-2で勝利するも、優勝した横浜F・マリノスに勝ち点2及ばず、リーグ2位に終わった。最終節を戦った味の素スタジアムで流した悔し涙は、今も忘れていない。
「昨シーズン優勝できなかったことで、その思いはより強くなりました」
橘田健人は誰よりも走ることでチームを引っ張るこの記事に関連する写真を見る 桐蔭横浜大学を卒業して川崎フロンターレに加入した2021年、リーグ開幕戦で途中出場したように、シーズン序盤から橘田は出場機会を掴んだ。彼の代名詞になっている豊富な運動量を持ち味に、4-3-3のアンカーを担うと攻守、特に中盤での守備でチームに貢献した。
「1年目から試合に出場することはできていましたけど、うまくいくことよりも、うまくいかないことのほうが多かった。自分自身がプロのレベルについていくのに必死で、余裕もなくプレーしている感覚でした」
チームがJ1連覇を達成したその年、橘田は大卒ルーキーながらリーグ戦29試合に出場した。だが、残した数字とは異なり、本人は試行錯誤する日々を過ごしていた。
「1年目はボールを取られたらどうしようということばかりを考えていて、ミスをしないようなプレーばかりを選択してしまっていました」
確かな手応えを掴みはじめたのは、プロ2年目の昨シーズンだった。
「プロのレベルにも少しずつ慣れてきて、新しいことに挑戦しようと思いはじめた1年でした」
さらに聞くと、橘田はこう教えてくれた。
「守備だけではなく、攻撃でも貢献できるようになりました。1年目が終わった時に、得点を狙いにいく姿勢やビルドアップに関与するプレーは増やさなければいけないと感じていたので、そこが少しずつ出せるようになりました。
あとは、1年目の時はボールばかりを見すぎてしまっていましたけど、ボールを受ける前に次のプレーの選択肢となる場所を先に見ておくこと、次のプレーにつながる立ち位置にいることもできるようになってきました。本当に少しずつですけど、自分がボールを受けて、次はこう展開したいと思ったところに、うまくボールを運ぶこともできるようになってきました」
先を読む力、未来を見る目が養われてきた証拠だった。
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著者プロフィール
原田大輔 (はらだ・だいすけ)
スポーツライター。1977年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務めたのち独立。Jリーグを中心に取材し、各クラブのオフィシャルメディアにも寄稿している。主な著書に『愛されて、勝つ 川崎フロンターレ「365日まちクラブ」の作り方』(小学館クリエイティブ)など。