苦肉の策「典型的CB→急遽SB起用」が大当たり。昨季MVP岩田智輝の穴を埋める上島拓巳は横浜FM連覇のキープレーヤー (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

【チャレンジを恐れぬ新参者】

 とりわけ苦しんだのは、攻撃の部分だっただろう。

 センターバックからボールを受けても前への選択肢はほとんどなく、うしろに下げるばかり。何度かダイレクトで縦方向を狙ったが、精度が足りず次の展開へと発展しない。逆に相手にカットされ、カウンターを浴びる機会も少なくはなかった。永戸勝也とエウベルが巧みな連動を見せた左サイドとは対照的に、上島のいる右サイドの攻撃は明らかにノッキングを起こしていた。

「いざ試合になると、自分がイメージしていたものとは違うものが出てきてしまった。パスミスだったり、トラップミスだったり、判断のミスが多くて......」

 しかし、上島はミスを繰り返しながらも、チャレンジを怖がらなかった。その姿勢が先制点を生み出すことになる。30分、上島の斜めのパスがスイッチとなり、巧みな連動から最後はエウベルが先制ゴールを奪取したのだ。

「試合を通して(アンデルソン)ロペスだったり、西村(拓真)選手のところは常に意識していました。成功したパスもあって、自分のよさを出せたのかなと思います」

 不慣れなポジションでも、自分のできることをしっかりとやる──。その思いが成果となって表れた瞬間だった。

 一方で、守備の部分でも難しさはあったはずだ。

 サイドではスピード系のアタッカーと対峙する機会が多く、センターバックとは守り方が異なる。実際に序盤は同サイドから相手にチャンスを作られていたが、時間が経つにつれてその頻度が減ってきたのは、上島の修正能力の高さだろう。

「今日は『3センターバックの右』のようなイメージでやってほしいと言われていました。リスク管理だったり、相手の左サイドにフタをするような役割を求められていました。前半は後手に回ってしまった部分もあったんですけど、後半はその役割をまっとうできたのかなと思います」

 攻撃参加を繰り出すサイドバックではなく、本職と同じく守備の意識を高く持ってプレーしたことが、異なるポジションであっても対応できた理由だろう。

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