苦肉の策「典型的CB→急遽SB起用」が大当たり。昨季MVP岩田智輝の穴を埋める上島拓巳は横浜FM連覇のキープレーヤー

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 右サイドバックでの出場を聞いたのは、わずか2日前だったという。

「小池龍太、小池裕太、そして松原健がケガをしてサイドバックの層が薄くなり、起用はチャレンジングでした。いくつかのオプションを持ちながらどうするか考えてきましたが、最終的には拓巳を使うことを決めました」

 横浜F・マリノスのケヴィン・マスカット監督は、今季の初陣となるヴァンフォーレ甲府とのスーパーカップに向けて、チームが緊急事態に陥っていたことを明かしている。

柏レイソルから移籍してきた上島拓巳柏レイソルから移籍してきた上島拓巳この記事に関連する写真を見る 本職の右サイドバックが不在となったなか、白羽の矢が立ったのが、今季柏レイソルから加入した上島拓巳(かみじま・たくみ/26歳)だった。

 本職はセンターバックの選手である。小学生の時から柏のアカデミーで育ち、中央大を経て2019年に柏に加入。プロ2年目にはアビスパ福岡に期限付き移籍し、当時J2だった福岡のJ1昇格に大きく貢献している。

 柏に復帰してからの2年間も主力としてプレーし、今オフにJ1王者へと籍を移した。身長186cmの高さと対人の強さが売りの、典型的なセンターバックの選手だ。

 横浜FMにとっては、昨季のMVPでセルティックに移籍した岩田智輝の穴埋めとしての補強だっただろう。本人もそのつもりだったはずで、シーズン最初の公式戦で「ほとんど初めて」というサイドバックでの出場は考えてもいなかったに違いない。

「大学の時に1試合か2試合やったことはありますけど、ほとんど初めてです。マリノスのサイドバックは特殊なポジショニングやスタイルがあるので難しさもありましたけど、自分にできること、求められていることを整理してピッチに立ちました」

 戸惑いながらも、"新参者"にはアピールのチャンスでもある。もっとも、やはりというべきか、ほとんど未経験のポジションをこなすことは簡単ではなかった。

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