VARでそこまでやる必要が本当にあるのか?「3D」採用によるオフサイド判定 (3ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki

 誤解を恐れず言えば、サッカーの試合におけるファールの判定には、それなりに"幅"がある。ルール上は相手選手を手で押したり、引っ張ったりしてはいけないことになっているが、実際には"ある程度"許されており、これくらいなら問題ない、という感覚的な基準が間違いなく存在している。

 ペナルティーエリア内では、特にそうだ。「スローで見れば、確かに引っ張ってはいるけど、この程度でPKは取れないよな」という感覚が、やっている側にも見ている側にもあることは否定できない。この種のファジーな部分は、VARが導入された現在もクリアになることはなく、ワールドカップのような特別な舞台でもモヤモヤは残ったままだ。

 ところが、オフサイドだけは体の位置さえ確定できれば、白黒はっきりつけられるため、テクノロジーを駆使してやけに厳密になってしまった。

 VAR導入以前の感覚に照らせば、リプレー映像を見直してもなお、問題なくオンサイドに見えるプレーでも、実際はオフサイド。そんなジャッジがVARによってくだされることは少なくない(オフサイドに見えるのにオンサイドの場合もまた然り)。

 たとえば、先のワールドカップ開幕戦で、エクアドル代表のMFエネル・バレンシアが放ったヘディングシュートが"幻の先制ゴール"となったシーンなどは、どこで誰がオフサイドになったのか、リプレー映像を見てもすぐには理解できないほどだった。

 しかも、今回3Dオフサイドラインを導入することで、VARがピッチ上のジャッジの正誤を判断するまでに、2Dよりも長い時間がかかってしまう(それだけの手間をかけているのだから当然だ)となると、なおのこと、ここまでやらなくてもいいのではないか、と感じてしまう。

 これらの技術は、Jリーグだけが独自に取り入れているものではない(ワールドカップなどでは、もっと進んでいる)。判定におけるテクノロジーの活用は、FIFAが主導する世界的潮流であり、もはや抗いようのないものだ。

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