日本代表に必要であることを証明した大迫勇也。国内組の有力候補の現状を総チェック (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

左より右のほうが動きが滑らかな長友佑都

 冨安、酒井宏樹、山根、さらには長友佑都も半分、参戦しているような状態にある右SBは、各ポジションの中で一番の激戦区である。

 名古屋グランパス対FC東京。長友はこの日も左SBではなく右SBで先発した。今季、長友のスタメン出場はこれが24試合目で、そのうち右SBとして出場した試合は18を数える。

 長友といえば左SB。長友の後継者探しは一時期、日本サッカーの課題とされた。しかし、右SBとしての長友ならば、後継者を探す必要はない。9月に行なわれたエクアドル戦には左SBとして先発したが、6月のブラジル戦、チュニジア戦では右SBとして先発を飾った。右も左もできる多機能なSB。左SBしか選択肢がなかったかつてより、評価を上げたとの見方もできる。

 名古屋戦。長友の対面には相馬勇紀が構えた。こちらも26人に選ばれるかどうかボーダーライン上にいる選手である。だが、長友はこの小兵同士の対戦を60対40ぐらいの関係で制した。1度、縦突破を許したのみだった。

 右SBの長友は、実際、左SBの長友より動きが滑らかだ。場所とのマッチングが自然に見える。なぜ長年、左だったのか。なぜもっと早くから右SBでプレーしなかったのか――とは、素朴な疑問だ。

 とはいえ、問題点も目にとまった。レアンドロ、松木玖生、木本恭生らは、長友が右の高い位置で、フリーでスタンバっているにもかかわらず、パスを出さなかった。チームメートからの信頼はいまひとつと見た。集団のパスワークには有機的に絡めずにいた。ピッチ全体への波及効果が乏しいのだ。年齢を重ねたベテランSBならば、パスワークの起点となる中盤選手的な要素がほしい。

 横浜FMと対戦した浦和レッズの右SB、酒井宏樹はなぜかあまり元気がなかった。ピッチ上に立つ22人のなかで、唯一の代表スタメン候補という現実を忘れそうになるほど存在感に欠けた。浦和のロドリゲス監督が、5バックになりやすい守備的サッカーで臨んだこととも関係したようだ。3バックの一角という低いポジションでは、自慢の推進力は発揮しにくいのである。

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