Jリーグを席巻するサガン鳥栖指揮官は女子サッカーからスタート。「今とまったく変わらなかった」

  • 小宮良之●文 photo by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

「いいと感じる店に必ず人は来る」

――女子選手を真摯に見つめたことが、力を引き出すきっかけになっているかもしれません。

「あると思います。女子選手のほうがやれることは少ないわけじゃないですか。できないことは、男子選手が2つあるとしたら、女子選手は8つある。変わったな、という場面に出くわす数が多かったなと思います」

――川井さんにとって、監督とは? 元スペイン代表監督のルイス・アラゴネスは「ベンチで死にたい」と執念と愛情を見せましたが。

「楽しいですよ......。でも他の監督に比べると、5歩くらい引いた感覚ですね。大事なのは、お客さんを喜ばせられるか、ですが。たとえばミュージシャン、飲食店経営、サッカー監督を経験していたら、そのなかでどれがいいかという問いには答えられるかもしれません(笑)。将来的に監督を続け、最後はベンチで死にたい、と言っているかもしれないが、求められる人を満足させられるか。日本サッカー界で、『監督をやってください、指導者をお願いします』と言われなくなったら、すっぱり辞めます。自分から懇願はしない。僕は食べるのが好きですが、自分が美味しいと思って作ったものを簡単に安売りするな、という考えで、そういう店には行きません。いいと感じるお店には、必ず人が来るはずで、オファーなくなった時点で、(指導者として)終わった人間という感覚はありますね」

――監督の理想もない?

「まるでないです。誰かの真似をしたくないんです。だから、海外の試合を極端に見ない。そこに惹かれるのが負けた感じに思えて。欧州はやっぱりこうやっていたという答え合わせはしますが(笑)」

――信念を感じます。

「僕は興奮しないほうですが、ミーティングで選手に口走ることはあります。『日本サッカーの基準さえも変えられたらいいよね』と。偉そうに言っているのではなくて、問題提起ができたらって。自分は女子サッカーの指導から始まっているので、当時は女子のほうがW杯で優勝し、『やっぱり最後は世界でしょ』というのがありました。前線に放り込みしていては、世界では絶対に無理。Jリーグではよくても、その場だけ勝つのは、信念と相反します」
(つづく)

Profile
川井健太(かわい・けんた)
1981年6月7日、愛媛県生まれ。現役時代は愛媛FCでプレー。指導者としては環太平洋短期大学部サッカー部監督を皮切りに、愛媛FCレディースヘッドコーチ、日本サッカー協会ナショナルトレセンコーチ、愛媛FCレディース監督、愛媛FC U‐18監督、愛媛FC監督、モンテディオ山形コーチを経て、今シーズンからサガン鳥栖監督に就任した。

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