川崎フロンターレらしさとは何か。打ち合い上等スタイルで「常勝軍団」の肩書きを手にしてほしい (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

迷走期の鹿島が下した決断

 圧倒的な強さで連覇を成し遂げた過去2年の川崎にあったのは、2点を奪えば3点目、3点を奪えば4点目を狙いにいく、容赦ない攻撃姿勢である。

「もちろん僕らが目指しているような展開ではなかったし、2−0になってからの試合運びも、もっとうまくやらないといけなかった」

 主将の谷口彰悟が振り返ったように、選手自身も本来の戦いではなかったことを認めている。

 ただし、谷口はこうも続ける。

「何が何でも勝ち点3を獲るということを、いろんな策を講じてやれたことは、ネガティブには捉えていません。そこまでして勝ちきったことはポジティブに捉えたい」

 なによりこの試合のテーマは、勝ち点3を確保することにあった。自らのスタイルを捨ててまで結果を求め、目論見どおりに結果を手にしたのだ。

 その意味では、したたかにも映る。結果にフォーカスし、ミッションを完遂できるのは、過去5年で4度優勝を成し遂げたチームに備わる"勝ちグセ"であり、勝者のメンタリティなのだろう。

「常勝軍団の看板を下ろしていい」

 鹿島の岩政監督は、この試合を前に選手たちに伝えたという。

 2016年を最後に優勝から遠ざかる鹿島は、いわば迷走期にある。監督交代を繰り返し、今季はクラブ史上初となる欧州路線へ大きく舵を切りながらも、やはり成果は生まれなかった。

 黄金期を知るOB監督には、忸怩(じくじ)たる想いもあるだろう。過去の栄光をかなぐり捨て、新しい鹿島を作っていく。再建を託された指揮官の発言は、揺らぐことのない覚悟の表れだ。

 一方で、その間にリーグの盟主となったのは川崎である。確かなスタイルを築き上げ、歴代最強とも呼べるチームが生まれている。

 内容が悪くても結果を出すのが、これまでの鹿島だった。逆にいいサッカーをしながらも勝ちきれなかったのが、2017年に初優勝を手にするまでの川崎だった。しかし、この試合は逆だった。

 たしかに押し込んだのは鹿島だったが、川崎は攻め込まれながらも被シュートは6本のみ。発展途上の鹿島に助けられた面もあったが、ツボを得た対応で隙を与えず、リードを確実に守り抜いたのだ。

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