ヴィッセル神戸がACL8強へ。J1首位の横浜F・マリノスを上回る攻撃力を発揮できたわけ (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • スエイシナオヨシ●撮影 photo by Sueishi Naoyoshi

 奪ったボールを素早く前線へ送り、大迫が収める。あるいは収められないまでも、相手DFと競り合ったところに、走力に長けたMF佐々木大樹や飯野七聖、テクニックに優れたMF汰木康也らが一気に駆け上がってサポートする。ホール保持率では劣っていても、有効打では横浜FMを完全に上回った。

 なかでも、出色の働きを見せていたのが、右サイドMFを務めた飯野である。

 今夏の移籍でサガン鳥栖から加入した背番号2は、「チームのために、人の何倍も走るのが僕の特長」と自ら語るハードワーカー。守備では二度追い、三度追いで相手ボールにプレッシャーをかけ続け、その一方でマイボールになれば、前線のスペースへとタイミングよく飛び出した。

 実際、労を惜しまぬ上下動は、神戸の3ゴールすべてに直結した。

 まずは前半7分、カウンターで右サイドのスペースへ走り込んだ飯野は、汰木からのパスを受け、先制ゴールを自らゲット。その後、同点に追いつかれて迎えた前半31分には、味方が失ったボールを高速プレスバックですぐに奪還し、勝ち越しのゴールを生むPK獲得につなげた。

 そして、ハイライトは後半80分。ピッチ上の選手の足取りが次第に重くなるなか、飯野は右サイド奥に流れたルーズボールを猛然とダッシュして拾い、試合を決定づける3点目のゴールへとつなげている。

 殊勲の飯野が、ダメ押しのシーンを振り返る。

「(2-1とリードし)守りに入ってもいい時間だったが、相手はマリノス。力のあるチームだとわかっていた。1点のリードでは不安だったので、前へ、前へという気持ちでやった」

 この試合で飯野が残した数字は、記録上1ゴールのみ。しかし、実質的には1ゴール"2アシスト"に値する活躍だった。

 今季の神戸は開幕直後から不振にあえぎ、J2降格の危機に瀕したまま、すでにシーズン後半戦に突入している。

 それだけに夏の補強が、状況を一変させるための起爆剤という意味も含めて必要だったわけだが、「勝ったこともそうだし、自分の特長をチームに還元できたのが大きい」と語る飯野が、まさにその役割を果たすべく奮闘している。

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