横浜F・マリノスが天王山で完勝。「宮市のために」結束したチームの勢いはさらに加速 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 実際、韓国戦に先発出場したDF畠中槙之輔、DF小池龍太は、鹿島戦でベンチにも入っていない。韓国戦と鹿島戦の両方に先発出場したのは、岩田とMF西村拓真のふたりだけだ。

 一方、鹿島は日本代表にひとりも選出されておらず、チーム全体で練習できる時間や疲労度という点で言えば、横浜FMには相当なハンデが課されていたはずである。

 だが、終わってみれば、少々のハンデなどどこ吹く風の完勝。韓国戦に先発出場し、鹿島戦でも後半80分から途中出場したMF水沼宏太は「疲れはまったくなかった。もっと出たかった」と言って笑い、こう続けた。

「誰が出ても同じレベルで戦えるのが、自分たちの強み。みんなで勝ちとった勝利だと思う。2位相手に勝ちきれたことは大きい」

 今季の横浜FMは、試合ごとに選手を頻繁に入れ替えて臨んでおり、選手層の厚さはJ1随一。代表に7人の選手を貸し出したところで、何ら動じることはなかった。

「彼らが(日本代表に)選ばれた時は、チームも自分もうれしかった。やってきたことが選ばれる結果につながったのは喜ばしいことだ」

 そう話すマスカット監督は、頼もしい選手たちを絶賛する。

「チームに残っていた選手も、代表に行っていた選手も、全員が90分を通してメンタルの強さをしっかり見せてくれた。選手を誇りに思う」

 しかしながら、「今日までの準備が簡単ではなかった」のは、それだけが理由ではない。

 むしろ、それ以上に大きかったのは、FW宮市亮がせっかくの代表戦で大ケガを負ったことだったのではないだろうか。

 他の6選手とともに、E-1選手権で日本代表に選出されていた宮市は、それがおよそ10年ぶりの代表復帰だった。

 高校卒業後、Jリーグを経ることなくフェイエノールトへ加入(アーセナルからの期限付き移籍)した宮市は、デビューと同時に大ブレイク。一躍、期待の注目株となり、アルベルト・ザッケローニ監督時代に日本代表にも選出されたが、その後は両膝の靭帯断裂をはじめ、幾度も大ケガに見舞われ、地獄を味わった。

 それだけに宮市は、「10代のときは、5年後、10年後にこうなっていたいというのがあったが、今は一日、一日のマインドが変わった。サッカー選手としてプレーできることに、本当の意味での感謝ができるようになった」と語り、代表復帰を喜んでいた。にもかかわらず、ようやく戻った晴れ舞台で、またしても右膝の前十字靭帯を断裂。あまりに無慈悲な結果だった。

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