F・マリノスの独走を止められるチームはどこだ。好調サンフレッチェを難なく撃破、もはや隙は見当たらない
専門誌時代に長く担当記者を務め、3度のリーグ制覇を成し遂げた黄金時代を目の当たりにしてきた身にとって、近年のサンフレッチェ広島の状況は実にもどかしかった。
正直、今季も苦戦するだろうと予想していた。実質補強はなく、ドイツからやってくるという指揮官についても、ほとんど情報がなかったからだ。
ところがフタを開けてみれば、よもやの快進撃である。
チームトップの今季8ゴール目を決めた25歳の西村拓真この記事に関連する写真を見る ヴァンフォーレ甲府からレンタルバックした野津田岳人がアンカーの位置で躍動すれば、大学経由で加入したアカデミー育ちの満田誠は技術と強度の高さを同居させたプレーでエース級の活躍を見せている。
既存の若手の成長も目覚ましく、森島司をはじめ、大迫敬介、藤井智也、東俊希が堂々とレギュラーを務め、佐々木翔、荒木隼人、塩谷司が形成する3バックは「リーグ最高」と言えるほどの堅牢さを誇っている。
なにより大きいのは、ミヒャエル・スキッベ監督の存在だ。ドイツ仕込みのハイプレスと縦に速い攻撃をチームに植えつけ、躍動感あふれるサッカーを実現。フラットな視点を持ち合わせ、常に競争原理を働かせていることも、この指揮官の優れた資質だろう。
試合を重ねるごとに自信がみなぎる広島は、14節から4連勝を達成するなど4位に浮上し、7月6日に横浜F・マリノスとの大一番を迎えた。
5連勝中の首位チームとの対戦とはいえ、前回対戦では快勝を収めた相手である。勝てばいよいよ優勝争いが現実味を帯びる。ところが、そんな筆者の淡い期待感はあっさりと打ち砕かれるのだ。
システムこそ違えども、おそらく両者のサッカーには共通する部分が多い。高い位置からプレスを仕掛け、能動的にボールを奪いにいく。そしてボールを奪えば素早く切り替え、一気に相手ゴールに迫る。
このトランジションこそが試合の肝になると予想していたが、そこで上回ったのが横浜FMだった。
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