5人交代制の恒久化でサッカー戦術は変化するか。「1トップ3人制」「セット替え」「セットプレーセット投入」など (2ページ目)

  • 後藤健生●文 text by Goto Takeo
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

カタールW杯では登録選手26人に増加

 当時も、ローカルルールで大会によっては交代が認められていたこともあった。そして、1958年にはルールで選手交代が認められた。だが、ワールドカップ本大会で交代が認められたのは1970年のメキシコW杯からだった(予選ではそれ以前から交代が認められていた)。

 初めは選手の負傷の場合にのみ交代を認めるべきだという意見も強かったが、交代が認められるようになるとすぐに選手交代は戦術的に利用されるようになった。メキシコW杯で選手交代を活用したのが西ドイツ(当時)のヘルムート・シェーン監督だった。西ドイツにはラインハルト・リブダ、ハンネス・レーア、ユルゲン・グラボウスキという3人のウィンガーがおり、彼らを交代させながら活用したのだ。

 当時の交代枠は2人だけだったが、1998年のフランスW杯からは3人の交代が認められるようになっていた。

 ちなみに、ラグビーでも1960年代には一部で選手交代が認められるようになっていたが、戦術的交代が正式に認められたのは1996年とサッカーより遅かった。だが、ラグビーはコンタクトプレーが多いため負傷の頻度も高く、また体力的消耗が激しい競技なので、現在では8人の交代が認められるようになっている。

 ラグビーは1チーム15人なので、選手の半数以上を交代させられるのだ。さらに出血の場合などでは、治療が終わったら元の選手が戻れる「一時的交代」という制度もある。

 さて、「5人交代制」の恒久化が決まった10日後には、11月に開催されるカタールW杯で登録選手数が従来の23人から26人に増えることもFIFAから発表された。

 これは重要な決定だ。

 現在、Jリーグでも「5人交代制」が実施されており、川崎と札幌の試合のように選手交代が勝敗を決めることもある。

 だが、Jリーグではベンチ入りできる選手は7人だけだ。そのうち1人はGKだから、フィールドプレーヤーは6人。そして、6人のうちディフェンシブなポジションの選手が2~3人だとすれば、交代可能なFWは3~4人しかいない。

 それでは、5人を交代させられるとしても、監督にとっての選択肢は限られてしまう。たとえば、FWを3人交代させるにしても、リスクを冒してでも1点をとりに行くべき試合と、逆にリードを守りたい試合では交代の面子は違ってくるはずなのだが、ベンチ要員が7人ではそうした選択はできない。

 しかし、26人が登録できるとすればベンチには15人の選手が控えている。そのうち2人がGKだったとしても、監督は13人のなかから交代選手を選択することができるのだ。選択肢は大きく広がる。

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