チェイス・アンリ、高卒即海外行きに「FWでスターになるかも」。関わるコーチ誰もが驚く成長スピードと能力 (3ページ目)

  • 松尾祐希●取材・文 text by Matsuo Yuki
  • photo by Matsuo Yuki

1試合で驚きの成長も

 その直後にはU-19日本代表と高校選抜の活動に参加。3月上旬にはパリ五輪を目指すU-21日本代表に招集された。同月下旬のUAE遠征でもメンバーに再び名を連ね、3連勝で優勝を果たしたドバイカップでは恐るべき吸収力で周囲を驚かせている。

 それは、U-23サウジアラビア代表との優勝決定戦だった。大一番で今大会初出場初先発となったチェイスは、前日からやや緊張していた。海外遠征で日の丸を背負って戦うのは初めて。アップ中も表情が硬く、キックオフ直後にはいきなり自陣でパスミスをしてしまう。

 大岩剛監督も「僕の目の前でやりましたからね」と苦笑いをしたのだが、そこからがすごかった。ひとつ上の年代のメンバーで戦っていたサウジアラビアに対し、怯まずに挑んで試合中にそのレベルにアジャストしていったのだ。

 CKから高い打点のヘッドで惜しいシュートを放って勢いに乗ると、守備でも持ち前のパワーとスピードを生かしたプレーで相手を食い止めた。前半の終了間際には最終ラインから一気に駆け上がって攻撃に参加。相手に押し込まれた後半はさらにギアが上がり、サウジアラビアの選手と互角以上に渡り合った。頼もしさすら感じられ、指揮官もその激変ぶりに目を丸くした。

「僕も空回りするのかもしれないと感じていた。もし空回りをしてもそれは彼にとっていい経験になるとは思っていたけど、高いレベルでやると、相手の圧倒的なレベルの高さと必死さが無の境地を生んだのかもしれないですね。僕も驚きました。全てが粗いプレーだったかもしれないけど、90分のなかで洗練されていった。ちょっと最後はどこかで(アンリを)頼りにしていましたから」(大岩監督)

 CBでコンビを組んだ西尾隆矢(セレッソ大阪)と言い争いをするぐらい無我夢中でプレー。年上の選手にも物怖じしない点も含め、サウジアラビア戦で見せたチェイスの成長スピードは末恐ろしかった。

 ドイツに渡っても、きっとその姿勢は変わらないだろう。そうであるならば、外国人選手たちと日常から対戦を重ねていけば、どこまで成長を遂げるかわからない。

 いきなりドイツでプロのキャリアをスタートさせるが、語学が堪能な点と海外生活が長かった点も含め、環境への戸惑いはないはずだ。「世界一のCBになること。チャンピオンズリーグに出て優勝する」と言いきるCBの可能性は無限大だ。

 もしかしたら、我々が思っているよりも早く、トップクラスでプレーしていたとしても不思議ではない。

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