日本は今や「ウイング王国」。FC東京の決勝点を生んだ身長160cmの韋駄天など注目株が 続々 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishuku Torao

日本代表の域に上りつめることができるか

 ウイングはスタンドの観衆のすぐ目の前でプレーする。スタンドの熱気はその活躍に大きな影響を受ける。そういう意味で、この試合は盛り上がった一戦となった。双方のウイングは、マスクの装着を強いられ、声を発することを禁じられた観衆の目を、十分に惹きつける役をしっかりと果たしていた。

 紺野は広島の藤井、満田に比べやや孤立していた。先述の通り、満田と森島がいつもより外側で構えたことで、FC東京の右SB渡邊凌磨に常時プレッシャーをかける状態にあったからだ。後方からサポートを得にくい設定に追い込まれていたため、単独突破を強いられるケースが多かった。紺野はしかし、それでも韋駄天ぶりを発揮した。マン・オブ・ザ・マッチに値する活躍を演じた。

 それまで互角に推移していた試合は後半15分、CKから森重真人のヘディングシュートが決まり、均衡が破れた。紺野が活躍したのは、キックオフで試合が再開されたその直後である。

 持ち前の俊敏なプレーで広島の精神的主柱、塩谷司に襲いかかりそのパスをカットしたのだ。淡泊だった従来のFC東京にはなかった嫌らしいプレー。ノートにそう書き記そうとした直後だった。FC東京の2点目となるこの試合の決勝ゴールをアダイウトンが決めたのは。

「敗戦の原因がどこにあるかわからない試合」と述べたスキッベ監督に、このワンプレーではないかと、思わずひと言、言ってやりたくなる紺野のボール奪取だった。

 Jリーグに本格復帰した160センチのウインガーは、ウイング天国ニッポンで今後、どの位置を占める選手に成長するか。実力が同じならば、身体の小さい選手を選べ。世界にはそのほうが日本らしさをアピールできる。これは日本代表のウインガー選考に求めたくなる筆者の願望だが、その域に紺野は上りつめることができるか。広島の両WBともども目を凝らしたい。 

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